【番外編】天使の加護 ～蒼～

チリリ⋯ スイングベルの音とともにこの季節特有の柔らかな風が吹き込む。 石に紋様を描いていた手を止め顔をあげると 顔見知りの耳長族がステップでも踏むかのような足取りで入ってきたところだった。 ｢やあ。今日はなんて素敵な日だろう。 木々は柔らかな日差しを受け芽吹いたばかりの緑が弾けるばかり。 風は花々の香りをまとい、この素晴らしい季節の到来を誰しもが全身で感じ取っている。 それなのにキミは相変わらず店の隅で石とにらめっこかい？｣ この耳長族特有の歌うような口上を片手で押しとどめる。 ｢私は外で季節の到来を感じるよりも 石とにらめっこしているほうが性に合うのでね。｣ つまらないとばかりに肩をすくめてみせた耳長族はカウンターの椅子に腰掛けると さぁ茶を出せと両手のひらを広げて見せる。 今日の土産話も長くなりそうだ⋯。 私はひっそりため息をつくとお茶をいれに奥へ引っ込んだ。 耳長族は私の入れた紅茶の香りに自分の好みの銘柄である事を悟ると ますます上機嫌になり鼻歌を歌いだした。それはそれは優雅に。 ―――――｢⋯もう終わりかい？君の冒険話は。｣ あれからどのくらい時計の短針が動いただろう。 お茶を何回注いだだろう。そして耳長族は何曲歌っただろう。 流石に疲れたのか続きはまた今度と涼やかに片目を瞑ってみせた。 ---------------------------------------------------------------------------- 今回のお話しはここまでの掲載とさせていただきます。 耳長族の土産話と同じく 物語が文字数の制限をはるかに超えてしまったためです。 どうにか削り全文掲載しようと思いましたがそれでも削り足りず このままでは書きたい事の半分も伝えられないと思い 泣く泣く冒頭のみ掲載となってしまいました。 楽しみにしていただいている皆さん申し訳ございません。 購入者の方のみ作品と全文をお送り致しますので ご購入していただけた方はお楽しみに。 ちなみに全文はＢ5サイズ用紙で5ページに仕上がっております。 羽根サイズ：最長約6cm 幅約3cm 材質：錫、ビスマス、レジン