チリリ・・・
スイングベルが遠慮がちに鳴ると
妖精は申し訳なさそうに消え入りそうな声でただいまと言って入ってきた。
「何時だと思っている。一体何処で何をしていたんだい?」
俯いたまま
ただごめんなさいと小さな声で呟くばかり。
良く見れば全身泥だらけだった。
「とりあえず湯を浴びようか。」
私がそう言うと妖精は全身の毛を逆立てカタカタと震えながら遠慮しますと後ずさる。
そうはいかないと逃げるのを捕まえ、洗い桶に座らせると泡立てた石鹸で洗ってやる。
その間妖精はカタカタと震え、目を白黒させながらしきりに謝った。
しかし肝心の理由については口をへの字に結び頑として語らなかった。
「一体何をしていたのやら・・・」洗ってやりながらため息をついた。
夜、寝返りをうつと鼻先が柔らかい物に触れる。
ふわふわの毛玉が枕元で寝息をたてていた。
石鹸の香りが体温で暖まった時の特有の太陽のような香りに顔を埋める。
妖精と出会った時の事を思い出した。
あの日は大雨だった。
街道沿いの茂みが音をたて私の興味を引いた。
水に濡れるのが大嫌いな妖精は今夜と同じように
そこでへの字の口をさらにへの字にして泣いていたのだ。
「うちに寄るかい?」手を差し伸べても逃げる素振りは無かった。
連れ帰り湯で体を温め乾かしてやると嬉しそうに飛び跳ねた。
雨が止めば勝手に出て行くと放っておいたが一向に出て行かず
気が付けば一緒にいるのが当然になっていた。
だから昨日姿が一日見えず胸が締め付けられる思いだった。
とうとうこの日が来てしまったのだと。
胸の痛みを思い出しながらすぐ横にいる温もりに安心し滑るように再び眠った。
目覚めると妖精が寝ていた場所に包み紙が置いてある。
開けてみると花香りと呼ばれる花の化石の針金細工が入っていた。
元来、花香りの化石は一人前に成長した子が親へ感謝の気持ちを込めて贈る物・・・ふふと自然に笑みがこぼれた。
階下で食器の割れる音がしている。朝食の準備をしているのだろう。
伸びをして起き上がった私の鼻先に焦げたパンの臭いが漂う。
やれやれ・・・ネコルモンめ・・・今日は開店前に一仕事しなければならないようだ。
チリリ・・・
スイングベルが遠慮がちに鳴ると
妖精は申し訳なさそうに消え入りそうな声でただいまと言って入ってきた。
「何時だと思っている。一体何処で何をしていたんだい?」
俯いたまま
ただごめんなさいと小さな声で呟くばかり。
良く見れば全身泥だらけだった。
「とりあえず湯を浴びようか。」
私がそう言うと妖精は全身の毛を逆立てカタカタと震えながら遠慮しますと後ずさる。
そうはいかないと逃げるのを捕まえ、洗い桶に座らせると泡立てた石鹸で洗ってやる。
その間妖精はカタカタと震え、目を白黒させながらしきりに謝った。
しかし肝心の理由については口をへの字に結び頑として語らなかった。
「一体何をしていたのやら・・・」洗ってやりながらため息をついた。
夜、寝返りをうつと鼻先が柔らかい物に触れる。
ふわふわの毛玉が枕元で寝息をたてていた。
石鹸の香りが体温で暖まった時の特有の太陽のような香りに顔を埋める。
妖精と出会った時の事を思い出した。
あの日は大雨だった。
街道沿いの茂みが音をたて私の興味を引いた。
水に濡れるのが大嫌いな妖精は今夜と同じように
そこでへの字の口をさらにへの字にして泣いていたのだ。
「うちに寄るかい?」手を差し伸べても逃げる素振りは無かった。
連れ帰り湯で体を温め乾かしてやると嬉しそうに飛び跳ねた。
雨が止めば勝手に出て行くと放っておいたが一向に出て行かず
気が付けば一緒にいるのが当然になっていた。
だから昨日姿が一日見えず胸が締め付けられる思いだった。
とうとうこの日が来てしまったのだと。
胸の痛みを思い出しながらすぐ横にいる温もりに安心し滑るように再び眠った。
目覚めると妖精が寝ていた場所に包み紙が置いてある。
開けてみると花香りと呼ばれる花の化石の針金細工が入っていた。
元来、花香りの化石は一人前に成長した子が親へ感謝の気持ちを込めて贈る物・・・ふふと自然に笑みがこぼれた。
階下で食器の割れる音がしている。朝食の準備をしているのだろう。
伸びをして起き上がった私の鼻先に焦げたパンの臭いが漂う。
やれやれ・・・ネコルモンめ・・・今日は開店前に一仕事しなければならないようだ。