鈴の音を響かせながら、
ソリは雪の夜空を走っていた。
サンタの横には、
あの手紙が大切にしまわれている。
「次の街まで、あと十二分です」
後ろから妖精の声がした。
「十二分?」
サンタは思わず振り返った。
「そんなことまで分かるのか」
「もちろんです」
妖精は得意そうに、
手元の画面を見せた。
渋滞もない。
道に迷うこともない。
天気も、到着時間も、
全部分かる。
「ほんとうに便利な時代じゃな」
サンタはそう言って、
再び前を向いた。
やがて、遠くに街の灯りが見えてきた。
たくさんの家。
たくさんの窓。
色とりどりのイルミネーション。
屋根の上には大きなサンタ。
庭には光るトナカイ。
窓辺では、
子どもたちが小さな画面を見つめていた。
昔はこの時間になると、
「もうサンタさん来たかな」
「まだ寝たふりしてよう」
そんな声が、
煙突のそばから聞こえてきたものだった。
今はどうなんじゃろう。
サンタは、少しだけ首をかしげた。
そのとき。
一軒の家の窓辺に、
小さな影が見えた。
子どもがひとり、
外を見ている。
手には何も持っていない。
ただ、夜空を見上げていた。
「……おや?」
サンタは手綱を少し引いた。
けれどソリは、
その家を通り過ぎていく。
「サンタさん、どうしました?」
「いや」
サンタは振り返りながら答えた。
「なんでもない」
けれど、
胸の奥に何かが引っかかった。
ポケットの中の手紙に、
そっと手を触れる。
「今年も来てくれますか?」
あの言葉が、
もう一度頭の中に浮かんだ。
もしかすると。
あの子が待っているのは、
プレゼントではないのかもしれない。
サンタはしばらく黙っていた。
そして、
少しだけソリの速度を落とした。
「なあ」
妖精たちが顔を上げる。
「今年は、少しくらい遅れてもいいかのう」
妖精たちは驚いた顔をした。
いつものサンタなら、
絶対に言わない言葉だった。
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