ソリは、静かに一軒の家の屋根へ降りた。
サンタはポケットから、
あの手紙を取り出した。
住所を、もう一度確かめる。
「ここじゃな」
窓の明かりは消えている。
家の中は、しんと静かだった。
サンタはいつものように、
音を立てないように中へ入った。
リビングには、小さなクリスマスツリー。
その下には、
まだ何も置かれていない。
サンタは袋を床に下ろした。
「さて……」
けれど、手が止まった。
この子は、
欲しいものを書いていない。
何を置けばいいんじゃろう。
ゲーム?
おもちゃ?
ぬいぐるみ?
考えても、
答えは出てこなかった。
そのときだった。
部屋の隅にある小さなテーブルが、
目に入った。
お皿の上には、
少し形のいびつなクッキーが数枚。
その横には、
小さなコップ。
そして、
折りたたまれた紙が一枚置いてあった。
サンタは、
そっと紙を開いた。
そこには、
クレヨンでこう書かれていた。
「サンタさんへ
きてくれてありがとう」
サンタは、しばらく動かなかった。
まだ何も届けていないのに。
まだ会ってもいないのに。
その子はもう、
「ありがとう」と書いていた。
サンタは、
もう一度クッキーを見た。
上手に丸くはない。
少し焦げているものもある。
それでも、
きっと一生懸命作ったのだろう。
「……そうか」
サンタは、小さくつぶやいた。
この子が待っていたのは、
欲しいものではなくて、
“サンタが来ること”そのものだったのかもしれない。
サンタは、
赤い袋から手を離した。
そして、
しばらくテーブルの前に立っていた。
何を置いて帰るかよりも、
今はもっと大切なことを
思い出しかけていた。
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