Vintage Christmas Storybook    第3話 昔のクリスマス

Vintage Christmas Storybook 第3話 昔のクリスマス

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「この子は、ここじゃな」 妖精が地図の一点を指さした。 サンタは眼鏡を少し上げて、 その場所をじっと見つめた。 遠すぎるわけではない。 いつもの配達ルートを少し変えれば、 立ち寄ることはできそうだった。 「では、今年のルートに追加しておきますね」 妖精がスマートフォンを操作する。 画面には、最短の道順がすぐに表示された。 「便利になったもんじゃなあ」 サンタは感心したように言った。 けれど、どこか少し寂しそうでもあった。 昔は、大きな紙の地図を机いっぱいに広げて、 「この山を越えて……」 「この村の煙突は細かったな」 「去年はここで雪に埋もれたぞ」 なんて話しながら、 みんなでルートを決めたものだった。 道を間違えたこともある。 吹雪で予定より遅れたこともある。 届ける家を探して、 夜空を何度もぐるぐる回ったこともあった。 今なら、そんな失敗はほとんどない。 場所も分かる。 時間も分かる。 一番早い道だって、すぐに教えてくれる。 それなのに。 サンタは、机の上の古い地図をそっと撫でた。 「昔の方が、楽しかった気もするのう」 妖精が不思議そうに首をかしげた。 「大変だったんでしょう?」 「そりゃあ、大変じゃった」 サンタは笑った。 「じゃが、大変だったからこそ、 よく覚えとるのかもしれんな」 サンタは立ち上がると、 窓の外を見た。 雪は静かに降り続いている。 厩舎ではトナカイが、 そろそろ出番だと言わんばかりに 鼻を鳴らしていた。 サンタは赤い帽子をかぶり直した。 「さて」 そして、机の端に置いていた あの手紙をポケットに入れた。 「今年は少し、寄り道をしてみるか」 妖精たちが顔を見合わせる。 いつものクリスマスとは、 ほんの少し違う夜が始まろうとしていた。 この物語りの世界から生まれた素材集はこちら https://minne.com/items/46375133

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