サンタは、机の上に置かれていた封筒をゆっくり開いた。
中から出てきたのは、小さな一枚の紙。
赤や青のクレヨンで、端の方に星やツリーが描かれている。
真ん中には、大きな文字でこう書いてあった。
「サンタさんへ」
サンタは眼鏡をかけ直した。
その下には、こう続いていた。
⸻
ことしもきてくれますか?
ぼくは、まだほしいものがきまっていません。
おかあさんに
「はやくきめないと、サンタさんこまるよ」
といわれました。
でも、ほんとうにきてくれるなら、
なんでもいいです。
⸻
「……なんでも、いい?」
サンタは思わず声に出した。
妖精たちも、手を止めた。
毎年届くお願いのほとんどには、
おもちゃの名前や、色や、大きさまで細かく書いてある。
最近では商品番号まで書かれていることも珍しくない。
けれど、この手紙には何も書いていなかった。
ゲームでもない。
おもちゃでもない。
服でもない。
ただ、
「今年も来てくれますか?」
それだけだった。
サンタはしばらく手紙を見つめた。
「困りましたね」
妖精が言った。
「欲しいものが分からないと、準備できません」
「そうじゃな」
サンタはそう答えながらも、手紙を置こうとはしなかった。
昔なら、こういう手紙を読むと、
「さて、何を持って行こうか」
と考えるのが楽しかった。
けれど最近のサンタは、
間違えないこと。
遅れないこと。
注文通りに届けること。
そんなことばかり考えていた。
サンタはもう一度、手紙を読み返した。
そして、小さくつぶやいた。
「……この子は、何を待っとるんじゃろうな」
妖精たちは顔を見合わせた。
答えは、誰にも分からなかった。
サンタはその手紙だけを、
ほかの注文書とは別の場所に置いた。
「この子は、どこに住んどる?」
妖精たちはすぐに地図を広げ、
一人はスマートフォンの画面をのぞき込んだ。
サンタも地図を見つめながら、
もう一度、あの言葉を思い出していた。
「今年も来てくれますか?」
今年のクリスマスに、
ひとつだけ、
注文番号のない仕事が増えた。
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