十二月になると、サンタの家は急に慌ただしくなる。
「今年の注文、こちらです」
妖精が差し出したのは、大きな紙の束――ではなく、薄い一枚のタブレットだった。
画面には、世界中の子どもたちから届いたお願いが、きれいに並んでいる。
ゲーム機。
新しい靴。
人気のおもちゃ。
名前の横には商品番号までついていた。
サンタは眼鏡を少し下げて、画面をのぞき込んだ。
「……便利すぎやせんか」
妖精は気にする様子もなく、指で画面をすいすいと動かしていく。
昔は、もっと大変だった。
曲がった文字。
何度も書き直した消し跡。
文章より大きく描かれた、よく分からない絵。
「これがほしいです」
たったそれだけの手紙もあれば、
どうしてそれが欲しいのか、便箋いっぱいに書かれた手紙もあった。
読むのには時間がかかった。
けれどサンタは、あの時間が嫌いではなかった。
今は、欲しいものならすぐに分かる。
その代わり――
どうしてそれが欲しいのかは、少し分からなくなった。
「次、確認お願いします」
妖精の声に、サンタが顔を上げた、そのときだった。
机の端に、一通の封筒が置かれていることに気づいた。
白い封筒の表には、赤いクレヨンで大きく、
「サンタさんへ」
と書かれていた。
少し曲がった文字だった。
サンタはタブレットから手を離し、その封筒をそっと手に取った。
そして、ほんの少しだけ口元をゆるめた。
「まだ、こういうのもあるんじゃな」
今年のクリスマスは、どうやら少しだけ違うものになりそうだった。
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