明るい窓の前まで来ると、黒猫は足を止めました。
ガラスの向こうには、お菓子がぎっしり。
かぼちゃの形のクッキー、しましまのキャンディ、小さなおばけの焼き菓子。
棚に並んだ瓶には、紫やオレンジのリボンが結ばれています。
黒猫は前足をそろえ、窓をのぞき込みました。
このお店を、知っています。
魔女がお菓子を焼きすぎて失敗した日。
「今日は買いに行こう」と、ここへ連れてきてくれたことがありました。
あの日も、窓にはリボンのついた袋が並んでいました。
黒猫が思い出していると、扉が開きました。
お菓子屋のおばあさんが、空の木箱を抱えて出てきたのです。
「あら。今日はひとり?」
黒猫はおばあさんの足元へ駆け寄りました。
「いつもの魔女さんは?」
黒猫が空を見上げると、おばあさんもつられて顔を上げました。
けれど、そこには月しか見えません。
おばあさんは木箱を置き、黒猫のそばにしゃがみました。
「はぐれちゃったのかしら」
黒猫は返事の代わりに、短く鳴きました。
おばあさんは通りの角を指しました。
「おうちは、あの角を曲がって、小さな橋を渡った先でしょう?」
小さな橋。
黒猫は耳を立てました。
橋の欄干には、丸い石が並んでいます。
いつも魔女と出かける時、黒猫が一つずつ飛び乗る石です。
そこまで行けば、帰れます。
おばあさんは店に戻ると、小さな包みを持ってきました。
黒猫は鼻を近づけましたが、おばあさんは包みをポケットにしまいました。
「これは魔女さんにね。おうちまで一緒に行きましょう」
扉の札を裏返し、鍵を掛けます。
黒猫は先に歩き始めました。
角を曲がると、本当に橋がありました。
丸い石を見つけて、いつものように飛び乗ろうとしましたが、今日はやめました。
早く帰りたかったのです。
橋を渡った先に、見慣れた窓の灯りが見えました。
――最終話へ続く。
https://minne.com/@komorebi-dp/letters/135661
*お菓子屋さんのように、包む楽しみを*
お菓子柄の紙を、小さな紙袋や包みの飾りに。
リボンやシールを合わせれば、自分だけのハロウィンラッピングが作れます。
イラスト6枚とデザインペーパー6枚を合わせた印刷用データです。
黒猫のハロウィンセットは、ギャラリーからご覧ください。
https://minne.com/items/46432277