サンタは、
テーブルの上のクッキーを一枚手に取った。
少し焦げていて、
形もきれいではない。
けれど、
口に入れると、ほんのり甘かった。
「……うまいのう」
思わず、笑みがこぼれた。
サンタはもう一度、
小さな手紙を見た。
「サンタさんへ
きてくれてありがとう」
まだ会ってもいない。
何かをもらったわけでもない。
それでも、この子は
サンタが来ることを楽しみにしてくれていた。
サンタは赤い袋の中をのぞいた。
たくさんのプレゼントの中から、
ひとつだけ小さな包みを取り出す。
注文されたものではない。
人気のおもちゃでもない。
ただ、
「この子なら、きっと喜んでくれる」
そう思って選んだものだった。
サンタはその包みを
ツリーの下にそっと置いた。
そして、少し考えてから、
テーブルの紙の余白に短く書き足した。
「こちらこそ、ありがとう」
家を出ると、
空にはまだ雪が降っていた。
屋根の上では、
妖精たちが待っている。
「遅くなりましたね」
「すまん、すまん」
サンタはソリに乗り込み、
手綱を握った。
「次はどこですか?」
妖精が画面を開く。
サンタはそれを見て、
少しだけ笑った。
「その前に」
ポケットから、
残りのクッキーを一枚取り出す。
妖精たちが笑った。
ソリは再び、
夜空へと走り出した。
たくさんの家が待っている。
たくさんの子どもが待っている。
欲しいものが決まっている子も。
決まっていない子も。
サンタを信じている子も。
もう信じていない子も。
それでも今年も、
クリスマスはやってくる。
サンタは遠ざかる街の灯りを見ながら、
クッキーをひとかじりした。
そして、小さくつぶやいた。
「クリスマスって、いいな♪」
鈴の音が、
雪の夜にやさしく響いていた。
⸻
おしまい
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