黒猫とハロウィンの夜 第4話|月の下のとんがり帽子

黒猫とハロウィンの夜 第4話|月の下のとんがり帽子

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黒猫は、かぼちゃの間から飛び出しました。 畑の向こうには、月明かりに照らされた街が広がっています。 屋根の上には銀色の光がこぼれ、細い煙突からは、白い煙がゆっくり夜空へ溶けていました。 「あっ、あれは魔女だ!」 黒猫は空に向かって鳴きました。 けれど、ほうきの影は止まりません。 風に乗った魔女のマントが、月の光を受けてふわりと揺れています。 その姿は遠く、夢の中の人のようでした。 コウモリが黒猫のそばまで降りてきました。 「知っている人なの?」 「うん。僕と一緒に暮らしている魔女だよ」 あの帽子は、玄関に掛かっている帽子。 あのほうきは、いつも黒猫がじゃれついて叱られるほうきでした。 黒猫の家の魔女です。 魔女は屋根の上で速度を落とすと、細い路地をのぞき込みました。 次に煙突の後ろへ回り、今度は通りを見下ろしています。 月夜の街には、色とりどりのランタンが浮かんでいました。 窓辺の灯りは星のようにまたたき、遠くから聞こえる笑い声が、夜の空気をふるわせています。 黒猫は不思議に思いました。 魔女がお出かけする時は、いつも迷わず飛んでいくのに。 今夜は、あちらへ行ったり、こちらへ戻ったりしています。 まるで、月明かりの中から何かを探し出そうとしているようでした。 そして、風に乗って声が届きました。 黒猫を呼ぶ、いつもの声でした。 「……僕を探してる」 その声を聞いた瞬間、黒猫の胸の奥がきゅっと縮みました。 さっきまできらきらして見えた街の灯りが、急に遠く感じられます。 出かける時、黒猫は何も伝えていませんでした。 少し街を見て、すぐ帰るつもりだったのです。 魔女は、空っぽの寝床を見て驚いたのでしょうか。 戸棚の下や、カーテンの後ろまで探したのでしょうか。 いつもなら、家のどこかにいるはずの黒猫。 その姿が見えない夜を、魔女はどんな気持ちで過ごしているのでしょう。 黒猫はもう一度、精いっぱい鳴きました。 「ここだよ!」 けれど通りでは、子どもたちが歓声を上げています。 仮面をつけた人々が月明かりの下を行き交い、風に揺れるランタンが、黒猫の声を遠くへ運んでしまいました。 魔女はこちらに気づかないまま、屋根の向こうへ飛んでいきました。 黒猫は後を追おうとして、足を止めました。 空を飛ぶほうきに、走って追いつけるはずがありません。 屋根の向こうへ消えたとんがり帽子を見つめながら、黒猫のしっぽが力なく下がります。 「どうしよう」 月は静かに街を照らしていました。 けれど、その光の中に魔女の姿はもうありません。 コウモリが、黒猫の前をゆっくり飛びました。 「きみは家に帰ろう。僕は、あの人にきみの居場所を伝える」 黒猫は顔を上げました。 「そんなこと、してくれるの?」 「きみには空の道が使えないでしょう。そこは僕の出番だよ」 コウモリの羽が、月明かりの中で黒い花びらのようにひらめきました。 その姿を見ていると、ひとりぼっちだった夜に、小さな道しるべが現れたような気がします。 コウモリは街の方を指しました。 「まず、あの明るい窓まで。通りに出れば、知っている場所があるかもしれない」 黒猫は頷きました。 遠くの窓から、あたたかな黄色い光がこぼれています。 その光の向こうに、魔女のいる家へ続く道があるかもしれません。 さっきまで不気味に見えたコウモリの羽が、今はとても頼もしく見えます。 「ありがとう!」 黒猫は灯りへ向かって走り出しました。 月明かりの細い道を、影と一緒に駆けていきます。 コウモリは月の下へ、ぐんぐん昇っていきました。 その小さな影は、夜空に浮かぶ星の間をすり抜けるように、魔女を探しに向かいました。 ――第5話へ続く。 https://minne.com/@komorebi-dp/letters/135660 *月夜の柄を、小さな贈りものに* 月と星のデザインペーパーは、小箱に巻く帯や、袋の口に添える飾り紙にも。 無地の包装に少し重ねるだけで、物語の夜空を添えられます。 販売するハンドメイド作品のラッピングにもお使いいただけます。 黒猫のハロウィンセットは、ギャラリーからご覧ください。 https://minne.com/items/46432277

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