夏が好きな人のためだけに作った本ではありません。
むしろ私は、この本の中でちゃんと言っています。
「親愛なる夏よ
私はお前が嫌いだ」
それでも、嫌いなものほど妙に覚えていることがあります。
蝉の声。
眩しすぎる青空。
かき氷。
浴衣。
花火。
楽しかった記憶だけなら、もっと素直に夏を好きになれたのかもしれません。
でも夏という季節は、どういうわけか、忘れたかったことまで一緒に保存してしまう。
まるで毎年、勝手に昔のアルバムを開いてくるような季節です。
綺麗な夏だけを書きたくなかった
夏を題材にすると、どうしても「青春」という言葉がついてきます。
青空の下で笑う人たち。
友達。
恋。
祭り。
花火。
たしかに、それも夏です。
でも、そんな夏の輪の外側にいた人もいる。
人と同じように青春を楽しめなかったり、
誰かを失った記憶が残っていたり、
自分自身のことを持て余していたり。
私は、そちら側の夏も本に残したかった。
だから『拝啓 夏よ』には、眩しいだけでは終わらない夏があります。
少し寂しくて、
少し気持ちが悪くて、
ときどき懐かしくて。
「好き」と「嫌い」が同じページに住んでいるような一冊です。
「拝啓」と書いたのは、夏に言いたいことがあったから
タイトルは、
『拝啓 夏よ』
です。
手紙を書くときの「拝啓」。
ずいぶん丁寧に呼びかけていますが、その相手に向かって私は「嫌いだ」と言っています。
なかなか失礼な手紙です。
でも、どうでもいい相手には、わざわざ手紙なんて書かない。
嫌いだと言いながら、
忘れられなくて、
毎年思い出して、
とうとう一冊の本まで作った。
そう考えると私は、夏のことを嫌いなだけではないのかもしれません。
好きとも言いたくないけれど。
この面倒な距離感ごと、本にしました。
夏をうまく好きになれなかった人へ
夏になると少し寂しくなる人。
みんなが楽しそうな季節ほど、自分だけ置いていかれた気がする人。
昔のことを思い出す人。
青春という言葉に、少しだけ居心地の悪さを覚える人。
そんな人に読んでもらえたら嬉しいです。
「夏って最高だよね」と肩を組んでくる本ではありません。
どちらかというと、
「分かる。夏ってちょっと嫌だよね」
と、少し離れた場所から一緒に花火を眺めるような本です。
あと一冊だけ、残っています
現在minneにある『拝啓 夏よ』は、在庫があと一冊になりました。
夏も少しずつ終わりへ向かっています。
この最後の一冊が、どんな人の本棚へ行くのか。
少し楽しみにしています。
夏が終わっても、
夏の記憶は案外しぶとい。
だから、その記憶の隣に置いておける本になれたら嬉しいです。
詩集『拝啓 夏よ』
minneにて販売しています。
https://minne.com/items/44213338
在庫、あと一冊です。🌻📖