作品説明
夜が、少しずつ長くなってきました。
昼間はまだ夏の名残を抱えている庭も、
月が昇るころには、どこか知らない顔をしています。
少女はひとり、庭の小道を歩いていました。
足元には、乾きかけた葉。
遠くから聞こえる虫の声。
風に揺れる草の影。
ふと見上げると、
秋の夜空に、淡い月が浮かんでいました。
「……今年も、月がきれい」
少女はそう呟いて、立ち止まります。
月明かりに照らされた庭には、
昼間には見えなかった小さなものがたくさんありました。
揺れるすすき。
落ちた花びら。
夜露をまとった葉。
どれも、ほんの少しの時間だけ見られるもの。
少女は思いました。
――この夜を、残しておきたい。
けれど、夜そのものを持ち帰ることはできません。
そこで少女は、小さな封蝋をひとつ取り出しました。
月の光をすくうように、
そっと蝋を垂らします。
そして、庭に咲く草花の影を刻むように、
静かに印を押しました。
月の下で生まれた、小さな秋の印。
それは、昼間の秋よりも静かで、
少しだけ寂しくて。
それでも、不思議なくらい穏やかな色をしていました。
少女は完成した封蝋を掌にのせ、微笑みます。
「これで、忘れないね」
月は何も答えません。
ただ、庭と少女を淡く照らしていました。
その夜、少女は封じました。
月の下でしか見つけられない、
静かな秋を。
そして翌朝。
庭には、昨夜と同じように秋の風が吹いていました。
けれど少女の小さな箱の中には、
確かにひとつだけ――
月明かりの残った秋が、眠っていました。
夜が、少しずつ長くなってきました。
昼間はまだ夏の名残を抱えている庭も、
月が昇るころには、どこか知らない顔をしています。
少女はひとり、庭の小道を歩いていました。
足元には、乾きかけた葉。
遠くから聞こえる虫の声。
風に揺れる草の影。
ふと見上げると、
秋の夜空に、淡い月が浮かんでいました。
「……今年も、月がきれい」
少女はそう呟いて、立ち止まります。
月明かりに照らされた庭には、
昼間には見えなかった小さなものがたくさんありました。
揺れるすすき。
落ちた花びら。
夜露をまとった葉。
どれも、ほんの少しの時間だけ見られるもの。
少女は思いました。
――この夜を、残しておきたい。
けれど、夜そのものを持ち帰ることはできません。
そこで少女は、小さな封蝋をひとつ取り出しました。
月の光をすくうように、
そっと蝋を垂らします。
そして、庭に咲く草花の影を刻むように、
静かに印を押しました。
月の下で生まれた、小さな秋の印。
それは、昼間の秋よりも静かで、
少しだけ寂しくて。
それでも、不思議なくらい穏やかな色をしていました。
少女は完成した封蝋を掌にのせ、微笑みます。
「これで、忘れないね」
月は何も答えません。
ただ、庭と少女を淡く照らしていました。
その夜、少女は封じました。
月の下でしか見つけられない、
静かな秋を。
そして翌朝。
庭には、昨夜と同じように秋の風が吹いていました。
けれど少女の小さな箱の中には、
確かにひとつだけ――
月明かりの残った秋が、眠っていました。
作品情報
サイズ
重さ 1g/縦3.5cm横3.3cm
発送までの目安
3日
配送方法・送料
クリックポスト
185円(追加送料:0円)
全国一律
全国一律
購入の際の注意点
ご購入前にご確認ください。
・ひとつひとつ手作業で制作しております。
色の混ざり方や気泡の入り方に個体差がございます。
・強い力を加えると割れる可能性がありますので、お取り扱いにはご注意ください。
・撮影環境により、実際の色味と多少異なる場合がございます。
・封蝋パーツとしての販売です。
粘着加工はしておりません。
小さなゆらぎも含めて、
作品の個性としてお楽しみいただけましたら幸いです。