作品説明
第一話 「秋のはじまり」
古い庭には、まだ夏の名残が残っていた。
昼間は蝉の声が遠くから聞こえ、
木々の葉は青々としている。
けれど、夕暮れが近づくと、
風の中にほんの少しだけ涼しさが混じるようになった。
その日、庭を歩いていた少女は、
いつものように古い花壇の前で足を止めた。
夏の間、何度も通った場所。
けれど――
そこに咲いている花が、昨日までとは少し違って見えた。
柔らかな秋色をまとった花が、
二輪、静かに咲いていた。
「……秋が来たのね」
少女がそっと花に触れる
。
花びらは夕暮れの光を受けて、
淡い橙色に輝いていた。
まだ暑い。
まだ夏は終わっていない。
それでも、この庭には確かに、
小さな秋が訪れていた。
少女は花を摘まず、その姿をしばらく眺めた。
そして、この景色を忘れたくないと思った。
やがて夜が来れば、
この花も、今日の光も、
いつか記憶の中へ消えてしまう。
だから少女は一通の手紙を取り出し、
今日見つけた「秋のはじまり」を綴った。
――古い庭に、今年最初の秋が咲きました。
手紙を折り、封をする。
最後に、庭で見つけた花の印を
そっと封蝋に残した。
夕暮れ色の小さな封蝋。
それは、誰かに届けるための手紙であると同時に、
この庭に訪れた最初の秋を、忘れないための小さな記憶だった。
そして今日も、黄昏の庭には静かな風が吹いている。
秋はまだ始まったばかりだった。
第一話 「秋のはじまり」
古い庭には、まだ夏の名残が残っていた。
昼間は蝉の声が遠くから聞こえ、
木々の葉は青々としている。
けれど、夕暮れが近づくと、
風の中にほんの少しだけ涼しさが混じるようになった。
その日、庭を歩いていた少女は、
いつものように古い花壇の前で足を止めた。
夏の間、何度も通った場所。
けれど――
そこに咲いている花が、昨日までとは少し違って見えた。
柔らかな秋色をまとった花が、
二輪、静かに咲いていた。
「……秋が来たのね」
少女がそっと花に触れる
。
花びらは夕暮れの光を受けて、
淡い橙色に輝いていた。
まだ暑い。
まだ夏は終わっていない。
それでも、この庭には確かに、
小さな秋が訪れていた。
少女は花を摘まず、その姿をしばらく眺めた。
そして、この景色を忘れたくないと思った。
やがて夜が来れば、
この花も、今日の光も、
いつか記憶の中へ消えてしまう。
だから少女は一通の手紙を取り出し、
今日見つけた「秋のはじまり」を綴った。
――古い庭に、今年最初の秋が咲きました。
手紙を折り、封をする。
最後に、庭で見つけた花の印を
そっと封蝋に残した。
夕暮れ色の小さな封蝋。
それは、誰かに届けるための手紙であると同時に、
この庭に訪れた最初の秋を、忘れないための小さな記憶だった。
そして今日も、黄昏の庭には静かな風が吹いている。
秋はまだ始まったばかりだった。
作品情報
サイズ
重さ 1g/縦3cm 横3.2cm
発送までの目安
3日
配送方法・送料
クリックポスト
185円(追加送料:0円)
全国一律
全国一律
購入の際の注意点
ご購入前にご確認ください。
・ひとつひとつ手作業で制作しております。
色の混ざり方や気泡の入り方に個体差がございます。
・強い力を加えると割れる可能性がありますので、お取り扱いにはご注意ください。
・撮影環境により、実際の色味と多少異なる場合がございます。
・封蝋パーツとしての販売です。
粘着加工はしておりません。
小さなゆらぎも含めて、
作品の個性としてお楽しみいただけましたら幸いです。