地下道から逃げたミュータントの二匹が、
廃浄水場の裏口で大ゲンカしていた。
片方は“ノイズ肩(ショルダーノイズ)”、
もう片方は“メルトバイト”。
どっちも癇癪持ちですぐ殴り合う。
「おまえらさぁ……またか?」
りゃんシーがため息をつく横で、
くうかいは耳を塞いでいる。
「やだやだ、声が強すぎる……!」
ミュータント同士のケンカは、ただの暴力ではなく、
“音”と“気配”で殴り合うようなものだ。
空気がバリバリと割れていく。
りゃんシーは腰のポーチから、
《沈静の樹皮》を一枚ずつ取り出した。
「ほら、噛め。話はそれから」
二匹はしぶしぶ樹皮を口に入れ、もぐもぐして、
だんだん動きがゆっくりになる。
やがて床に座り込んだ。
「……考えたんだけど……」
ノイズ肩がぽつり。
「おれ、メルトがいないとつまんない」
「おれだって、おまえと同じとこ逃げたいし……」
りゃんシーは頭をかいた。
「ほらな。どっちも悪いし、どっちも正しいし、どっちも子ども。
ケンカすんなら俺んとこでやれ。壊すなよ町を」
二匹は照れたように頷いた。
裏国分寺の喧嘩仲裁は、だいたいこんな感じだ。