◆ 雨の日の裏国分寺 ―「影、雨を飲む」

◆ 雨の日の裏国分寺 ―「影、雨を飲む」

公開
裏国分寺に雨が降ると、普通の場所より“影の音”がよく聴こえる。 りゃんシーは軒下で、濡れたくうかいをタオルで拭きながら言った。 「ほら、毛が水吸うんだからさ。カムイの遣いだろ、おまえ」 「ぼくは熊の子だもん……雨は好きだけど、冷えるんだよ」 そのとき、あたりの影がざわり、と揺れた。 雨粒に紛れて、黒い“影雫”が地面に落ちている。 影雫は、夜の住人たちのため息が固まったもので、 放っておくと増えてしまう。 りゃんシーはしゃがみ込み、小瓶を差し出した。 「はいはい、吸わせてやるよ。飲みたいだけ飲め」 影雫たちは、瓶に向かって静かに溶け込んでいく。 最後の一滴が落ちると、町が少しだけ軽くなった。 「ねぇりゃんシー」 くうかいが言う。 「雨の日って、裏国分寺のみんな、ちょっと泣きやすいよね」 「……まあ、俺もだよ」 雨音にまぎれたその言葉は、誰にも聞こえなかった。

レターの感想をリアクションで伝えよう!

天才だと思い込んでハラスメント受けまくって無茶して副腎疲労になったトランスジェンダー

りゃんシーの香草庵
作品を見る