インタビュー

奄美の生きものにいのちを吹き込む。ビーズ刺繍作家mitsuroさんが「珠結」に込めた想い

一粒のビーズに、光と色が宿る。奄美市在住の作家・mitsuroさんが手がけるのは、奄美に暮らす鳥や生きものをモチーフにしたビーズ刺繍のアクセサリーです。第11回あまみハンドメイド大賞では【珠結(たまゆい) つながり、むすぶ。奄美「結(ゆい)の島】でminne賞を受賞。今回は、ものづくりの原点から、奄美という土地との出会い、そしてこれから挑戦したいことまで、たっぷりとお話をうかがいました。

mitsuro(ミツロー)/鹿児島県奄美市
ビーズ刺繍を中心に、奄美の生きものをモチーフにしたブローチやアクセサリーを制作。第11回あまみハンドメイド大賞にてminne賞を受賞。
https://minne.com/@mitsuro-92

ものづくりの原点。ビーズとの出会いと、奄美への移住

mitsuroさんが作品づくりを本格的に始めたのは2019年。「つくりたい」という欲求から、まずレジンやビーズを使った作品をつくり始めました。
そのルーツをたどると、小学生時代の記憶にたどり着きます。

mitsuroさん
ビーズとの出会いは小学生のころ、親戚の叔母さんにもらった赤いジャラジャラのビーズのブレスレットです。とてもかわいく、そこからキラキラしたビーズに魅了されて、自分でも簡単な花のブレスレットをつくったりしだしたのが始まりでした。

転機となったのは、夫の故郷である奄美へのIターン移住。地元・九州北部とはまったく異なる気候や風土、そしてそこに暮らす生きものたちとの出会いが、mitsuroさんの創作に大きな影響を与えることになります。

mitsuroさん
奄美の気候や風土、そしてそこにいる生きものたちが、これまで身近に感じてきたものとは全然違っていて、移住した当時はとても驚きました。

「珠結」の名前に込めた想いと、生まれた瞬間

あまみハンドメイド大賞の存在は以前から知っていたものの、ビーズで奄美を表現したいと考え始めたのは2025年に入ってからのことでした。

mitsuroさん
以前から存在は知っていましたが、挑戦までは考えていませんでした。日々いろいろつくっていく中で、ビーズで何か奄美のものを表現したいなと考え出したのが2025年に入ってからでした。

その思いから生まれたのが「珠結シリーズ」です。サンゴ礁をイメージした作品づくりから、シリーズが動き出します。

mitsuroさん
創作意欲がニョキニョキ出てきて、サンゴ礁をイメージしたものをビーズでつくり始め、2025年10月ごろ「珠結シリーズ」の走りとなるものを初めて制作したのが始まりでした。最初につくったのは奄美でいう「エラブチ」、本土でいうブダイです。

最初のモチーフにエラブチを選んだのは、意外にも衝動的なひらめきからだったそう。

mitsuroさん
自分がいちばん好きな色がTOHOバラビーズのNo.55で、そのビーズを見ていたら、エラブチが思い浮かび、衝動的につくり出していたのがきっかけです。

そしてシリーズ名「珠結」の名付けにも、明確な気づきの瞬間がありました。

mitsuroさん
小さな「珠」を針で一粒ずつ刺し、結んでいく。手仕事の積み重ねが、やがてひとつの「いのち」になります。その動作そのものが「結(ゆい)」なのだと気づき、「珠」と「結」の二文字が浮かびました。「結」は、人と人、人と自然が支え合い、共に生きる奄美の心。小さな珠を結び、いのちとつながりを形にしていく。「珠結」は、これからの作品づくりの原点となる名前です。

こうして生まれた「珠結」を携えて、mitsuroさんは今回、あまみハンドメイド大賞に初めて挑戦することを決めました。初めての応募でminne賞受賞という結果に、喜びもひとしお。

mitsuroさん
身に余る賞をいただき、ただただ嬉しかったです。結果発表の日、飛び上がって喜びました!

「あまみハンドメイド大賞」受賞作品発表ページ

一粒に込める、煌めきとリアルのあいだ

mitsuroさん
奄美の生きものをつくるときは、かわいすぎず、リアルすぎない表現と、煌めく配色を大切にしています。とくに、目の位置やビーズの傾きによって表情が決まるので、そこは慎重に制作しています。

ビーズ選びにも、独自の基準があるといいます。

mitsuroさん
パール系のビーズを使いすぎないこと、色や質感にメリハリをつけること。そして、透明なビーズを使うときは、下地のフェルトの色との組み合わせを意識しています。同じ色のビーズでも、素材や透明感、光の反射によって印象が変わるので、角度を変えて確認したりしながら、作品全体を見て一粒ずつ選び分けています。

制作の楽しさと大変さについてもうかがいました。

mitsuroさん
とくに楽しいと感じるのは、新しい生きものの制作に取り掛かったときです。「早く完成させたい!」という気持ちがどんどん出てきて、夢中になって手が止まらなくなってしまいます。逆に大変なのは、ビーズを刺し進めている途中で「なんかイメージと違う」と感じたときです。そこまでつくったものを一度すべて外して、納得のいく形になるまでつくり直すことは大変ですが、妥協せずに制作するようにしています。

奄美の音と暮らしが、制作の土壌になる

mitsuroさん
作品づくりには、奄美の「音」がとくに影響しています。暮らしの中で、自然の音や生きものの鳴き声がたくさん届いてきます。

移住直後、もっとも印象に残った出会いについて、こんなエピソードを聞かせてくれました。

mitsuroさん
「キュロロロロー」と鳴くアカショウビン。「ギャーギャー」と鳴くルリカケス。この鳥たちも驚きましたが、いちばん印象に残ったのは「リュウキュウズアカアオバト」です! 最初、その声の主が鳥だと気づいていませんでした! ずっと奄美ではこういう笛を吹く音を鳴らして暮らしているんだろうなぁー、何かのサイレンかな?と思いながら数ヶ月過ぎたころ、義父に「アオバトよー」と教えてもらい仰天しました! 葉笛のような、チャルメラの音のような「プーゥー、パ、ポォーー」という声で、鳥の鳴き声には聞こえませんでした。

そんな賑やかな生きものたちの声に包まれながら、mitsuroさんの毎日は営まれています。子育てとものづくりを両立する日常についてもうかがいました。

mitsuroさん
外でのパートや、家でのデザインの仕事、家事などをしながら、制作の時間をつくっています。作業場所がリビングなので、制作をしながら子どもたちの様子を見ているような感じです。作業中に時々「飛行機やってー」と足元にやってきたり、「今、何つくってるの?」と聞いてきたり。作品ができて「できたよー!」と伝えると、「わぁーー!すごいねー!このキラキラした青色がいいねぇー!」と褒めてくれることもあり、それがとても嬉しいです。

仕事や子育て、そして制作と、慌ただしい毎日を送るmitsuroさん。息抜きの方法にも、奄美の暮らしならではの楽しみがありました。

mitsuroさん
好きなことは釣り、ガーデニング、貝殻拾い、DIYなどです。釣りは奄美に来て始めました!

これから ── ウミガメ、そして奄美の生きものたちへ

mitsuroさん
今、新しいモチーフで「ウミガメ」を制作しています! それ以外には奄美特有の生きものたちにも挑戦していきたいです。

輪郭を描き、金糸で甲羅の線を刺し、すこしずつビーズを重ねて完成した一匹が、流木とサンゴの上で輝く──そのひとつひとつの工程に、mitsuroさんの丁寧な手仕事が詰まっています。

作品を通して実現したいことをうかがうと、こんな言葉が返ってきました。

mitsuroさん
万華鏡を覗いたときのような、「わぁー!」と心が動く瞬間。作品を見た方にも、そんなキラキラしたものを見つけたような感覚になってもらえたら嬉しいです。

そして最後に、作家として見据える未来について。

mitsuroさん
奄美の自然をもっと多くの方に知ってもらい、興味をもってもらえるような作品づくりをしていきたいです。

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