空の色のピアス/昼下がり色 《小さなお話つき》

空の色のピアス 
 
 空の色をつかまえる方法をご存知ですか？ 写真に撮る？絵に描く？ 
 いいえ、汲み取るのです。 
 
 空と海の境目まで、 まっ白な木の船で漕ぎ出していって、 今にも海に沈みそうな空を、 金色の桶でそっと汲み取るのです。 
 空が、海のやわらかさにすっかり油断して とろけてしまいそうになっているところを、海の水ごと、捕まえるのです。 
 
 捕まえたら、 空の色が水から逃げださないように、 ゆっくりと桶を船にあげます。 
 
 桶の中で、 朝焼けの空は驚いて、 うっすらオレンジ色にひかります。 
 夕焼けの空は、 次第に色を変えながら暮れていきます。 
 晴れた空は、何事もなかったかのように、青い波もようを船の白いへりに反射させます。 
 旅の帰りぎわに見るような琥珀色の空は、どこか切なそうに、セピア色をいっそう濃くします。 
 無数のピンクが溶け合う空は、魚のようにゆったりと、桶の中を泳ぎ回ります。 
 
 陸に帰ったら、 汲み取った空の水を 金色の匙でやさしくすくって、 花の蕾でできた型に流し込みます。 
 砂浜で木の葉をかぶせて、 次の満月の夜が明けるまで 静かに寝かせておきます。 
 
 こうして、 地球上のある日、どこかで生まれた空の色をそっととじこめた、空の色の石ができあがります。 
 
 空の色を長く楽しむには、 石とよく似た色合いの空を 石と一緒にしばらく眺めたり、 空と海のよく見える場所へ 石を連れ出すとよいそうです。 ------------ 台湾の素材屋さんで見つけた、不揃いなガラスパーツを使ったピアスです。 色むらや気泡がいい味になっています。 お話の通り、 海へのお出かけの時などに 麦わら帽子に合わせたりしてもらいたいピアスです。