真夜中。
影ターミナルには、昼間よりも“本物の線路の気配”が強く集まる。
誰も使ってないのに、聞こえるのだ。
列車の重たい息。
りゃんシーとくうかいは、手元のランプを頼りに、
ホームの端から清掃を始めた。
落ちているのは紙じゃない。
錆の夢、鉄粉のため息、
それから“乗り遅れた幽気”がぽつぽつ転がっている。
「これ、ほっとくと線路が寝られないんだよな」
くうかいが、不思議そうに訊いた。
「線路って、寝るの?」
「そりゃ寝るよ。だって毎日、
もう走らない列車の記憶を運んでるんだから」
二人が落ちている“幽気”を拾い集めるたびに、
駅全体がふっと静かになる。
最後の一つを拾った瞬間、
ホームの奥から、柔らかい鉄の軋み音がした。
──ありがとう。
それは線路の寝息だった。