
https://minne.com/@chica3f

テーブルに並べていただいた、小さな花やリボン、猫たち。
ひとつ手に取らせてもらうと、ぷっくりとやわらかな艶があって、言われなければ粘土とは気づかないほどです。
「身につけることで、何気ない日常が鮮やかに色づきはじめる。そんな存在になりますように」井上さんがそう願ってつくり続けてきた「かわいい」は、2015年のスタートからおよそ10年を数えます。

日々のなかで心をとらえた一瞬や、誰もがどこかに持っている懐かしい記憶のかけら。それを井上さんはどんなふうに見つけ、かたちにしているのでしょう。ひとつずつ、ひもといていきます。
「これなら、自宅で続けられる」——素材との出会い
井上さんとものづくりの関わりは、子どもの頃にまでさかのぼります。

大学で取り組んでいたのは、アクセサリーとはずいぶん印象の異なる素材でした。ガラス繊維を樹脂で固めたFRPや、温めたアクリルを型に吸いつけて成形する真空成形。軽くて丈夫なその素材で、椅子や立体作品を制作していたといいます。卒業制作のために、まだインターネットもない時代に電話帳を片手にプラスチック加工の会社を一軒ずつ当たって回った、という武勇伝も飛び出しました。
ただ、合成樹脂の制作には大型の設備が欠かせません。卒業後はその環境から離れざるを得ず、お菓子メーカーでパッケージや企画のデザインを担当。その後はフリーランスのデザイナーとして、さまざまな企業の商品デザインに携わってきました。
転機は2015年。家庭用のオーブンだけで成形できる「ポリマークレイ」という素材の存在を知ったときでした。

学生時代にあきらめたはずの素材に、家庭のオーブンを通して再会できた。〈地下3階〉は、その「戻ってこられたぞ」という喜びから始まっています。
隠れ家のような、自由な創作の場所
「地下3階」という、すこし不思議で耳に残る名前はどのような由来があるのでしょう。

そのうえで井上さんが惹かれたのが、この言葉の持つ空気でした。

長く企業の仕事に携わってきた井上さんにとって、自分の世界観をまっすぐに表現できる場所。その思いが、名前にもそっと込められています。
ポリマークレイの自由と、「チープに見せない」工夫
ポリマークレイの一番の魅力は、色も質感も自由自在に調整できること。表面を磨いて艶やかに仕上げることも、マットでやわらかな表情にすることもできます。
一方で、難しさもあります。プラスチック素材ゆえの「チープに見えやすい」という壁です。

金属パーツや天然石を組み合わせたり、リボンにはパールを練り込んで上品な光沢を出したり。陶器のようなしっとりとした質感を目指して表面処理を重ねたり——。手のなかで見せていただいたリボンは、言われなければ粘土とは気づかないほど、やわらかな艶をたたえていました。
道具へのこだわりも徹底しています。同じモチーフを精度よく、安定してつくるための抜き型は、デザインから製作まですべて井上さんの手づくり。アルミの板を切り出してつくるので、市販の型よりやわらかく、何度でも微調整ができるのだそう。

ちなみに、よく使うモチーフの型は「もう5代目くらい」。抜いているうちにかたちが変わるからではなく、「ここはもうすこしもっちゃりさせよう」と、作品そのものがすこしずつ進化しているからだといいます。
くるくるリボンと、ブームを待つ畑
数あるシリーズのなかで、井上さんがとりわけ思い入れを語ってくれたのが「くるくるリボン」でした。
たどり着いた立体的なフォルムは、〈地下3階〉のリボンシリーズすべての原点になっています。
そして、猫。学生時代に保護したことをきっかけに、今は3匹と暮らす井上さんにとって、猫はもっとも身近なモチーフです。日々見せてくれる愛らしい仕草や表情を、できるだけそのままの魅力でかたちにしたい。その思いから、瞳の色や尻尾のデザインを選べるカスタマイズの仕様も生まれました。
「花占い」「こつぶ」といった、ふっと微笑みたくなるシリーズ名。庭に咲いた花、子どもの頃に拾った木の実、浜辺の貝殻。身近なものから生まれる「かわいい」を、短く、見た瞬間にイメージが浮かぶ言葉でそっと包んでいます。
興味深いのは、これだけ幅広いモチーフが、どれも「地下3階らしさ」でひとつにまとまっていること。その背景には、企業のデザインで培った冷静なまなざしがありました。

市場の空気を読みながら、注目を集めているモチーフを前に押し出す。けれど、いくら勢いがありそうでも「地下3階っぽくない」と感じたものは取り入れない。迷ったときは、すでに作品に共鳴してくれているファンの反応を見て判断する。譲るところと譲らないところを見極めながら、ブランドの世界観を丁寧に守っています。

最近では「見せ筋商品」と「売れ筋商品」を分けて考えるようにもなったといいます。価格は高めでも、ブランドのイメージを引っ張る象徴的な作品。そして、それをつくっているブランドのものなら手が届く、と思ってもらえる身近な作品。その両方があってこそ、長くものづくりを続けていけるのだと、10年の積み重ねが教えてくれたそうです。
オーブンを開ける、いちばんドキドキする瞬間
制作は、頭のなかのアイデアを粘土でかたちにすることから始まります。スケッチを描き、型紙を粘土の上に置いてカッターで切り、厚みやサイズを確かめる。「これはいけそう」と手応えを感じたものだけ、抜き型の製作へ進みます。成形し、焼成し、仕上げる。井上さんにとって、いちばん楽しい瞬間は決まっています。

逆にいちばん難しいのは、頭のなかにあるたくさんのアイデアを「アクセサリーとして魅力的に成立するかたち」に落とし込むこと。どうしてもピンとこなければ、数日置いて冷静に見直す。完成に至らない作品もあるけれど、それも制作の過程だと受け止めているといいます。
品質で特に力を入れているのは「付け心地」です。
特殊なデザインのものは、半日や一日つけてもらって、どんなときに落ちやすいかまで試す徹底ぶり。発送前の最終検品も、仕上げをした人とは別のスタッフが行う二重チェック体制です。

色の正確さを判断するために、できるだけ昼間の自然光のなかで作業するのもこだわりのひとつ。特にパールや光沢のあるリボンは人工照明の影響を受けやすいため、自然光の下で一つひとつ確かめながら仕上げています。
minneだからできた、「お試し」の自由
長く企業の商品開発に携わってきた井上さんが、自分のブランドを立ち上げる場所にminneを選んだのには、強く惹かれた理由がありました。

なかでも井上さんが「ありがたい」と繰り返したのが、minneならではのスピード感でした。
お客さまとの距離が近いのも、個人で始めたからこそ。忘れられないエピソードを聞かせてくれました。


毎年同じ時期に、決まって作品を贈ってくれる男性のお客さまもいるそう。「きっと大切な誰かへの贈り物なんだろうな」と想像しながら、井上さんはその一人ひとりの暮らしにそっと寄り添っています。
年齢を重ねても、「かわいい」を楽しむために
これから挑戦したいのは、〈地下3階〉の世界観をもっと広げていくこと。ポリマークレイのアクセサリーだけでなく、Tシャツや靴下、いつか文房具まで——日常のなかに気軽に取り入れられるアイテムを増やしていきたいと考えています。すでにTシャツや靴下では、猫モチーフを使った試みも始まっているそうです。
その根っこにあるのは、年齢を重ねた人にも「かわいい」を楽しんでほしいという願いです。

鏡の前で小さく微笑む、その瞬間のために
最後に、この記事を読んでくださるminneユーザーへのメッセージをお願いしました。

学生時代にあきらめた素材に、家庭のオーブンを通して再会した一人のデザイナー。その手から生まれる小さな「かわいい」は、今日も誰かの日常を、そっと鮮やかに色づかせています。
新色と、特別な一点のご案内
記事公開を記念して、〈地下3階〉さんからふたつのお知らせです。日常をそっと色づかせる「かわいい」を、ぜひ手に取ってみてください。
「ひらひらリボン」お一人さま限定オーダーカラー

抽選で1名さまだけに、あなただけのカラーで「ひらひらリボン」のイヤーカフをおつくりします。“推しカラー”やお気に入りの服に合わせたい色など、ご希望をうかがいながら井上さんが粘土を一から調合。パールを含んだサテンのような上品な光沢の一点を、ギフトボックス付きでお届けします。
購入をご希望の方は、抽選にお申し込みください。
・応募期間:2026年6月10日(水) 20:00 〜 6月20日(土) 20:00
「くるくるリボン」新色〈シェルピンク〉

リボンシリーズの原点「くるくるリボン」に、やさしい〈シェルピンク〉が仲間入り。ピアス・イヤリングとネックレスからお選びいただけます。







