インタビュー

気持ちの輪郭に、そっと重なる服。リネンとアンティーククロスを纏うonomatopee

リネンやコットンを中心に、シルエットとディテールにこだわった服づくりを続けるonomatopee。「ふわふわ」「うきうき」と、言葉になる前の感覚をすくい取るような服は、10代から80代まで、幅広い世代の女性に愛されています。その静かでやわらかな佇まいは、どんなふうに生まれているのでしょう。今回は、付け襟作家のRingoさんとのコラボレーションも交えながら、onomatopeeさんにたっぷりお話をうかがいました。

つくり手は、onomatopeeさん
リネンやコットンを中心に、シルエットとディテールにこだわった着心地のよい服づくりを手がける。近年はアンティーククロスを使ったリメイクにも力を注ぐ。「ふわふわ」「うきうき」と、言葉になる前の感覚を服にすくい取る。
https://minne.com/@onomatopee

神戸のアトリエは、窓の外に緑が広がる、光に満ちた場所でした。白いリネンやレースの服が掛かったラック、年月を感じさせるアンティークの飾り棚やドライフラワー。木のテーブルには、アンティークのクロスやレースがやわらかく重ねられています。手仕事の気配に満ちたその空間で、お話は始まりました。

「つくりたい」から始まった、独学の服づくり

意外なことに、onomatopeeさんは自分の服づくりは「想像もしていなかった」と言います。もともとは別の分野で仕事をしていましたが、仕事を離れたことをきっかけに、自分が着たい服をつくり始めたのがスタートでした。

onomato
pee
自分が着たい服をかたちにしてみたいなと思って。最初は市販のパターンでパンツをつくって、そこからすこしずつアレンジして、という感じで始めました。

服づくりを専門に学んだわけではなく、すべて独学。それでも、頭の中のイメージだけは、はっきりとありました。

onomato
pee
自分のつくりたいもののイメージは、すごくしっかりあったんです。でもつくれない。だから縫製をされている方に聞いて、手伝ってもらいながら、つくりたいものがすこしずつかたちになっていく。その楽しさを重ねてきました。

服づくりの「常識」を知らなかったからこそ、生まれたものもあります。

onomato
pee
こんなところにこんなファスナーをつけたい、と相談すると、プロの方からは「その手間は受けられないよ」と言われるようなむちゃなオーダーをしていたみたいで(笑)。無知ゆえの強さですね。でも、固定観念がないぶん、つくりたいものをまっすぐかたちにできたのかもしれません。

その原点には、高校時代から通った古着屋さんの存在がありました。

onomato
pee
古いものって、ディテールがすごくこだわってあるんです。きっとオーダーメイドでつくられたんだろうな、というような細部まで丁寧で、長く着られる。それがすごく魅力的で。好きなものだけが、自分の中に積み重なっていった感じがします。

やがてネット販売を始め、百貨店のポップアップへ。阪急うめだ本店をはじめとするイベントへと広がっていきました。

1mmの積み重ねが、空気感をつくる

リネンやコットンを選ぶ理由を、onomatopeeさんは「育つ喜び」という言葉で表現します。

onomato
pee
天然素材は、着こなしていくうちにゆったりやわらかくなって、経年で風合いも変わっていく。着る人になじんでいく感じが好きなんです。アンティーククロスも同じ天然素材だからこそ、新旧が違和感なく溶け合って、唯一無二の奥行きを生んでくれます。

そして、onomatopeeさんが何より大切にしているのが、ごく細部へのこだわりです。

onomatopee et Ringo — 乙女のお茶会 —

onomato
pee
ボタンの大きさ、レースの幅、ピンタックの間隔……。ほんのすこし違うだけで、服全体の印象は驚くほど変わってしまうんです。1mmの違いを妥協すると、自分のイメージとは違うものが積み上がっていってしまう。ボタンも1mm単位でこだわったりして、「なんでそんなところを」と言われたりもするんですけど(笑)。

その小さな積み重ねこそが、手に取ったときに「すっとなじむ佇まい」を生む。onomatopeeさんはそう信じています。

ブランド名「onomatopee」は、フランス語で擬音語・擬態語を意味する言葉から。

onomato
pee
「ひらひら」「ふわふわ」といった、言葉になる前の感覚を、そのまま残しておきたいと思ってつけました。理屈を超えて心にスッと入ってくる、うまく説明できないけれど確かにそこにあるかたちのないものを、服としてすくい取れたら、と。

設計図のない服づくりと、アンティークへの挑戦

新しいデザインは、狙ったところからではなく、ふとした瞬間に生まれると言います。

onomato
pee
アトリエで生まれた布の偶然の重なりや、ふと目にした視点の錯覚から生まれることが多くて。本来のかたちとはすこし違うものが心に映ったとき、そこに新しいデザインの種が隠れている気がします。

onomatopee et Ringo — 白い花びらの記憶 —

制作は、きっちりとした設計図から始まるわけではありません。素材と向き合いながらかたちを立ち上げ、出来上がってからもすこしずつ手を加えていきます。アイロンでシワやギャザーを入れる工程さえも、完成形へ近づけるための大切なデザインの一部です。

onomato
pee
最初から完成形があるわけじゃなくて。出来上がってからすこしずつ変えていって、より自分のイメージに納得できるもの、ピタッとくるものにしていく感じなんです。

最近とくに力を入れているのが、アンティークのテーブルクロスやレースを使ったリメイクのシリーズです。何もないところから組み立てる服づくりとは、まったく逆の思考が必要だと言います。

onomato
pee
あるものをどう活かすか、という発想は、これまでやったことがなくて。一枚の生地をどう配置すれば服になるんだろう、と去年はすごく悩みました。

アンティークの布は、一枚ごとに模様も状態も違います。シミやほつれを落とし、洗って整え、刺繍で補修する。お客さまの手に渡る状態にするまでに、新しい生地の何倍もの手間がかかります。

onomato
pee
それでも、昔の人が大切につくって使ってきた布を使うことには、意味があるなと思うんです。長い時間を誰かの暮らしの中で過ごしてきた布を、今の暮らしに軽やかに着られるかたちにできたら、と。

付け襟作家・Ringoさんとの「相乗効果」

そんなonomatopeeさんが、約10年前から共に歩んできたのが、付け襟作家のRingoさんです。出会いは、同じ主催者に声をかけられた百貨店のイベントでした。

onomatopee et Ringo — 木漏れ日 —

Ringoさんが扱うのは、すべてフランスのアンティーク・ヴィンテージレース。蚤の市を巡って買い付けたレースを、丁寧に手洗いし、ほつれを補修して、一点ものの付け襟へと仕立て直しています。きっかけは、祖母から受け継いだスワトウのレースでした。フランスのレースを蚤の市で見てみたいという思いが募り、人生初めての一人旅は、なんとパリへ。

Ringo
それまで一人で大阪を出たこともなかったんです。蚤の市でレースが売られているのを初めて見たときは、もう感動で震えました。

長く時を重ねたレースには、ほつれや傷みもあります。そこにRingoさんは、丁寧に補修と補強を施します。

Ringo
ボビンレースという手作業のレースを、フランスまで習いに行ったんです。構造がよくわかったので、補修の仕方も自分でわかるようになって。長く大切にされてきたものに、敬意を持って接したいんです。

なかでも印象的なのが、自ら黒に染めるというこだわりです。

onomatopee et Ringo — 白と 黒いバラ —

Ringo
お花や花束といった幸せのモチーフのレースを選んで、自分で黒に染めるんです。「これは幸せのレースです、そして私が染めた黒です」という気持ちで。

新しい生地を使うよりも何倍も手間のかかる仕事を通じて、新しい命を吹き込むRingoさんに、onomatopeeさんは深い敬意を寄せています。
二人を結びつけたのは、onomatopeeさんが感じた「相乗効果」でした。リネンの服に付け襟を重ねたときのお客さまの反応を見て、二つが組み合わさることで魅力が何倍にもなると気づいたのです。

onomato
pee
完成されたもの同士が重なることで、新しい景色が広がるような感覚があって。付け襟というかたちだからこそ、装いにすこし奥行きが生まれて、これまでとは違う表情が見えてくる。それぞれの個性が響き合う、そのバランスを楽しんでいます。

面白いのは、二人がコラボ作品を一緒につくっているわけではない、ということ。それぞれが独立したブランドとして別々に制作し、当日にその場で組み合わせています。

onomato
pee
事前に大きな打ち合わせはしないんです。当日、お洋服を広げて、そこに付け襟を合わせていく。「このワンピースの襟ぐりには、この付け襟が一番美しく映える」と、一点一点、鏡の前でパズルのように組み合わせていく。お互いのこだわりが「これだ!」と重なる瞬間を探る、とても贅沢な時間です。

不思議なほど、二人は「気が合う」のだと言います。向いている方向もゴールも、仕事のスピードも、イベントに持っていく点数まで似ている。Ringoさんは、出会いの頃をこう振り返ります。

Ringo
onomatopeeさんがもう企画が進んでいた自分のポップアップに「出てみない?」と声をかけてくれて。「私でいいの?」という気持ちでした(笑)。
onomatopeeさんが最初に「相乗効果」という言葉を言ってくれた通り、お互いを引き立て合うことで、それぞれに新しい魅力が生まれていると感じています。二つのブランドを合わせたコーディネートをお客さまにご提案して、奥行きのあるファッションを楽しむお手伝いができていることが、すごくうれしいんです。

縛りをかけ合わず、それぞれが自由に走るからこそ続いてきた関係。コロナ禍で百貨店のイベントが急に静かになったときも、二人で売り場を見直しながら、前を向いて手を動かしていたそうです。「onomatopeeさんへの信頼は?」と尋ねると、Ringoさんは「日頃からすべてにおいて全幅の信頼を寄せていますので、答えはすべてです」と笑います。

onomato
pee
お互いの専門性を尊重しながら、「これだ」と納得できる最高の組み合わせを探る時間は、一人での制作とはまた違う、とても贅沢で刺激的な喜びがあるんです。

好きなものを、好きと受け止めてくれる人へ

つくったものが初めて誰かの手に渡ったときの喜びを、onomatopeeさんは今も鮮やかに覚えています。

onomato
pee
私が可愛いと思ってかたちにしたものを、同じように可愛いと受け止めてくれる。好きなものが好き、という人がいてくれるんだ、と。それがすごくうれしかったですね。

イベントを活動の中心にしてきたonomatopeeさんにとって、minneはまた違う手ざわりを持つ場所です。

onomato
pee
minneは、写真や言葉を添えて、ブランドの物語をそっと手渡せる、どこか手紙に近い静けさがあると感じています。画面越しだからこそ、背景にある思いまでゆっくり届いていくような気がして。それに対してイベントは、リネンの風合いを直接指先で感じていただける、体温のある場所。お客さまの表情がふっと変わる瞬間を見届ける、「ライブ」の喜びがあります。

届いた服を「子どもの入学式や結婚式に着ていきました」と、写真付きのメッセージで知らせてくれたお客さまもいたそう。人生の節目という大切な瞬間に寄り添う一着として選ばれたことは、onomatopeeさんにとって「この上ない幸せ」でした。

重ねることで生まれる、新しい表情

これからのことを、onomatopeeさんは「無理に広げるのではなく、続けていく中で見えてくるものを一つひとつ大切にしたい」と話します。いつか自分のアトリエで、お客さまと直接会えるイベントを開いてみたい。最近増えてきた海外からの問い合わせにも、すこしずつ応えていけたら——。
最後に、コラボ作品を楽しみにしてくれている方へ、メッセージをいただきました。

onomato
pee
onomatopeeの服が持つ空気感と、Ringoさんが守り伝えてきたアンティークの空気感。この二つが重なることで、新しい表情が生まれる装いになりました。特別な日だけでなく、日常の中でさりげなく楽しんでいただけたらうれしいです。纏うたびに、心がふわりと満たされるような、豊かな体験をお届けできますように。

Ringo
onomatopeeさんの上品で上質なリネンのお洋服に、Ringoのフランスアンティークレースの付け襟をコーディネートしました。穏やかに溶け合い優しい奥行きを感じていただける装いです。この機会に、お求めいただけると幸いです。

1mmの違いを見つめ、言葉になる前の感覚をすくい取る。onomatopeeさんの手から生まれる服は、今日も誰かの気持ちの輪郭に、そっと寄り添っています。

ふたつの世界が出会う、コラボ作品のご案内

記事公開にあわせて、onomatopeeのリネン服とRingoのアンティークレースの付け襟が、minneに登場します。日常にも特別な日にも寄り添う、二つの空気が重なった装いを、ぜひご覧ください。

販売開始日時:2026年6月26日(金) 20:00〜
販売ページはこちら

・onomatopeeさんのショップhttps://minne.com/@onomatopee
・Ringoさんのショップhttps://minne.com/@ringoantique

取材・撮影・執筆:真田英幸
一部写真作家提供

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