インタビュー

【連載】わたしのHANDMADE AWARD vol.2 〜 OTOOTOさん「その手に届ける、までが作品づくり」

子どものころ、特別な日のためにわくわくとした気持ちでつくった「折紙の輪っか飾り」。そんな輪っか飾りをテーマにしたファッションアイテムを制作されているOTOOTOさんにお話をうかがってきました。昨年「minneハンドメイド大賞」で2冠を手にし、OTOOTOさんには新たな「はじまり」がたくさん訪れています。

子どものころ、特別な日のためにわくわくとした気持ちでつくった「折紙の輪っか飾り」。そんな輪っか飾りをテーマにしたファッションアイテムを制作されているOTOOTOさんにお話をうかがってきました。昨年「minneハンドメイド大賞」で2冠を手にし、OTOOTOさんには新たな「はじまり」がたくさん訪れています。

わたしのHANDMADE AWARD

作家さんの発掘・支援を目的として2015年より開催している「minneハンドメイド大賞」。今年は「minneハンドメイドアワード」と名称を変えて新たに誕生し、8月1日より作品の応募受付を開始します。応募にあたって、すこしでもみなさんの参考になればー そんな想いで、minne mag.では過去の受賞作家さんにお話をおうかがいすることにしました。今回は、昨年「話題賞」と「ゲスト審査員賞」の2冠に輝いた、OTOOTOさんのアトリエにお邪魔しています。

プロフィール

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OTOOTOさん

「折紙の輪っか飾り」をテーマにしたアクセサリー・雑貨を手がける。「minneハンドメイド大賞2017」では、「ニットの輪っか飾りスヌード」がゲスト審査員『鈴木修司賞』と『話題賞』を受賞。


お気に入りの部屋で

OTOOTOさんの作品が日々生まれる、自宅兼アトリエ。

「いちばんのお気に入りです」と指をさすOTOOTOさん。見上げると天井レールには、スワッグやハンカチなど、minneでも活躍されている作家さんたちの作品が。

YPONさんの帽子も、夏場は欠かせないアイテムなんだそう。あたたかい日差しがたっぷりと入り込む、お気に入りのアイテムに囲まれた一室でお話をうかがいました。

4年目を迎えるということ


昨年のまさに今ごろ、「minneハンドメイド大賞」に応募していただいたわけですが、当時の心境はおぼえていますか?

OTOOTO
もちろん、とても印象に残っています。「OTOOTO」は、2014年の7月28日にはじめたので、昨年はちょうど3周年だったんです。記念のグッズをつくったり、個展の準備に取り掛かっているときでした。

お忙しいタイミングだったんですね。

OTOOTO
そうなんです、4年目を迎えるにあたって結構意気込んでいて。作家活動を振り返れば、1年目は「よし、やるぞ!」とずっと必死でした。2年目に入ると、徐々にペースを掴むことができてきて。ただ3年目に入ると、「慣れ」のせいもあってか、現状維持に満足しはじめている自分がいることに気づいてしまって。ずっと続けていくためには、4年目を迎えるにあたって、ちょっと気持ちを入れ直して「変わりたい、成長せなあかん!」と思ってたところだったんですよ。

当時もご活躍されていたので、記念日をきっかけに「変わりたい」というお気持ちがあったというのは意外でした。個展や記念グッズ制作の他にもなにか挑戦されたことはありましたか?

OTOOTO
作家さんとのコラボも、3周年の企画としてお声がけをはじめていましたね。「素敵だな」と思う作家さんに自分から声をかけていきました。それから、もともと「アクセサリーだけをつくりたい」というわけではなかったので、アクセサリー以外のファッションアイテム制作にチャレンジしてみたいと思っていました。

OTOOTO
2017年の4月ぐらいからそんなことを考えていて、7月28日に4年目を迎えたらまずチャレンジしよう!と思っていたのが、ニットでつくる「スヌード」だったんですよ。

後の受賞作品「スヌード」の構想は春からあたためていたんですね。

OTOOTO
そうなんです。ただ、募集の告知を見たのが6月で。8月から募集開始だと知って「7月からはじめていると間に合わない!」と急遽、予定を早めたんです。

「スヌードで勝負しよう」と決めたOTOOTOさんは大急ぎで準備に取り掛かります。それもそのはず、このとき、なんとOTOOTOさんはこれまでの人生で一度も「編み物」の経験がなかったのでした。

結果は心に決めていた


短い期間で編み物の技術を習得されるのは、大変でしたよね。

OTOOTO
今でもまだまだ下手くそで。ぜんぜん習得はできてないんですよ(笑)ただ、どうしても「輪っかのスヌード」をつくりたくて。その作品で挑戦したい!と思ってしまったので。「子供でもできるニットの本」みたいなものを急いで買ってきて、とにかく自分なりにがんばってみました。

OTOOTO
やっぱり自分の中で、特別な想いがあったんだと思います。ちょうど自分を見つめ直して「変わりたい」と思っていたときだったので、このコンテストはチャンスだと感じましたね。実はそれ以前の年も、応募はしてたんです。だけど、改めて特別な作品をつくるわけではなく、いつもつくっているお気に入りのブローチで挑んでいました。「一応、出しておこう」みたいな気持ちだったと思います。

2017年の応募は、どんなふうに変化しましたか?

OTOOTO
必ずひとつは賞をもらおう、入賞しよう、と心に決めて挑みました。「これは、4年目に向けた挑戦なんだ」という気持ちで、できることは本当になんでもやろうと思ったんです。

はじめての編み物で90個の輪っかをつなげ、OTOOTOさんの応募作品が見事完成したのは8月のことでした。

作品は「つくる」で終わらせない


作品撮影やSNSでの発信をはじめ、心に決めた「受賞」に向けて、OTOOTOさんの本当の挑戦がはじまりました。

OTOOTO
一次審査は写真で判断されるものなので、まず写真で魅力を伝えなければいけない。きっとこの撮影は、作品づくりと同じぐらい大切なものなんだろうと思いました。minneのアトリエ(神戸)にうかがって、撮らせてもらいましたね。

一次審査を見事通過されて、すこし肩の荷はおりましたか?

OTOOTO
いえいえ、通過はもちろんうれしかったんですが、そのあとの二次審査までの1ヶ月は本当にお腹が痛くて(笑)

より、緊張や不安が高まってしまったんですね。

OTOOTO
実物審査までにやりたいこともたくさんあったので、とても集中した期間でしたね。実物を見てもらうとき、「審査員の方にどうやって魅力を伝えるのか」という部分に頭を使いました。わたしは、作家活動の中でもすごく大事だと思っていることがあって。それは、「つくる、だけで終わらせない」ということなんです。

OTOOTO
作家活動をはじめる前は、文具メーカーに勤めていました。自社の商品を文具店や雑貨店に置いてもらうための営業職をしていたんですが、「実際にお店で扱ってもらった商品が売れるように」というところまで考える必要があったんです。どうすれば商品が良く見えるか、どうすれば魅力が伝わるか、を日々考えていました。「どんなポップつくろう」なんて頭を悩ませた経験は、いまの作家活動でもすごく活きていますね。イベントでは「着画の写真を持っていく」というのも、そのひとつ。「つくる」「置く」「送る」だけで終わらせちゃだめだと思うんです。魅力を伝えるのも、大事な仕事だと思うので。

「手に取ってもらえるところまで、作品をプロデュースする」ということですね。

OTOOTO
そう、まさに「プロデュース」ですね。最大限、魅力が伝わるように考えています。なので、スヌードも「ただ袋に詰めて送るだけでは、あかんやろうな」と思いました。そこで思いついたのが、マネキンでした。100均でマネキンの頭部を見つけてきて、その首に巻いた状態で箱に入れて送ったんです。開けた瞬間「どのように使うものなのか」がすぐにわかるように。

OTOOTO
その場にわたしがいない、という状況で、しっかりと「魅力」「使い方」を説明できる方法だと思いました。実際に審査会場でマネキンのまま置いていただけるかどうかはわからなかったけど、「やらないよりやろう!」という気持ちでしたね。

もちろん、マネキンの首に巻いて置かせていただきました。会場の中で、遠くからでもスヌードであることがよくわかりましたし、とても上手いアイデアだなと思ったんです。もうひとつ、OTOOTOさんの作品にはおどろかされたことがありました。

OTOOTO
梱包ですよね。

到着した箱を開けると、スヌードが巻かれたマネキンのまわりには、緩衝材としてたくさんの「折り紙の輪っか」が使われていました。

カラフルでとてもきれいでした。いまのお話をうかがうと、まさに「届くところまで」をしっかりと演出する、OTOOTOさんらしい工夫だなあと改めて感じます。

OTOOTO
もちろん「作品を見てもらいたい」というのがいちばんですが、「OTOOTO」というブランドを知ってもらいたい、という気持ちでしたね。

2つの賞を手にして


そしてOTOOTOさんの「ニットの輪っか飾りスヌード」は見事、「話題賞」と「ゲスト審査員賞(鈴木修司賞)」に2冠に輝きました。

OTOOTO
やっぱりうれしかったですね。特に話題賞は、一般の方のSNSの応援のおかげなので。お客さま全員にありがとう!って気持ちでいっぱいです。普段は、小さいアクセサリーをつくっているので、テイストのちがうスヌードを受け入れてもらえるかというのは不安なところでした。それでも、「twitterは非公開で使っているけれど、OTOOTOさんを応援したいから公開にしました」って言ってくださった方までいて、感激してしまいました。感謝ですね。

『BEAMS JAPAN』のバイヤー・鈴木さんの賞はいかがでしたか。

OTOOTO
とっても意外でしたね。ファッション業界の有名なプロフェッショナルに選んでいただけたというのは、自分自身おどろきでした。初心者の編み物に目をとめていただけたというのは、わたしが伝えたかったものが伝わったんだろうな、と一層うれしく思いました。一般の方の「欲しい!」という支持も、プロの方の評価も得ることができたというのは、とてもありがたくて。自分自身の「4年目の挑戦」でつくった作品で、この2つの賞をいただけたことは、すごく意味のあることでしたね。

OTOOTO
賞をいただけたことで、より気持ちを引き締めることができた部分も大きくて。台紙やパッケージの変更、サイトのクリエイティブもつくりなおしたり。ずっと「もっと良くしたいな」と思っていたものを、改めて見直すいい機会にもなりました。

輪っかのようにつながる


作品のたのしいコンセプトにお人柄も重なって、応援したくなってしまうのがOTOOTOさんの素敵な強みだと思います。

OTOOTO
照れますね、ありがとうございます(笑)応援してくださる方には、本当に感謝ばっかりで。活動の中でも、「気に入って使ってます」「応援してます」ってお手紙をもらえたりするのが、いちばんしあわせですね。

OTOOTO
2年ほど前にお手紙で、「輪っかがつながるように、いろんなものがつながっていくような気がします」って書いてくれていたお客さんがいて。それからは、「輪っか飾り」のコンセプトのひとつとして、「つながること」「出会い」みたいなことも意識するようになりましたね。このモチーフに、意味を乗せてくれたのもお客さんなんです。

輪っか飾りのように、軽やかにもしっかりとつながり、OTOOTOさんのお仕事はさまざまな展開を見せています。

OTOOTO
今度、輪っか飾りのバッグのワークショップをやるんです。SNSでも反響があったので、いつか販売もしたいと思ってます。

作家さんとのコラボもまだまだ続く予定ですか?

OTOOTO
6名の作家さんにお声がけしていたんですが、かなりのスピードですすめてしまったので、また何人かの方とご一緒させていただきたいと思っています。いま、okamoto barba namiさんともいっしょに作品を制作中なんです。わたしだけでなく、わたしの好きな作家さんや作品のことも、たくさんの方に知ってほしいと思うので。そんなふうに「つながって」いけたらいいですよね。

2つの賞を受賞したことで、一層たくさんのつながりと広がりがOTOOTOさんの活動を賑やかにしています。

2018年挑戦するみなさんへ


最後に、今回の応募を考えられてる方にメッセージをお願いできますか。

OTOOTO
応募するか迷っている、という方は絶対に出したほうがいいと思います。自分を見つめ直す機会にもなりますし、きっと作家活動に変化が生まれると思うんです。一次審査を通過するだけでも、たくさんの方に作品を見ていただくきっかけになりますし、授賞式のあの場で過ごしたのは、日ごろの作家活動へのご褒美のような、とてもキラキラとした時間でした。1次は写真審査なので、とにかく魅力を最大限に伝えられるような、とびっきりの1枚を。

まずはそこから。その1枚をスタートにたくさんのことが広がってつながっていきますものね。

OTOOTO
そうですね。わたしの4年目の活動にも、大きな変化と新しいつながりを与えてもらいました。続けるのは自分自身ですが、続けられるのはまわりのみなさんや、こういったきっかけのおかげだと思うので、思い切って挑戦してほしいと思います。ぜひ一歩を踏み出してみてください。

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「minneハンドメイドアワード2018」エントリー作品募集中!

作家さんの発掘・支援を目的に開始した「minneハンドメイド大賞」。4回目の開催を迎える今回より、コンテスト名を新たに「minneハンドメイドアワード」として生まれ変わりました。みなさまからのたくさんのご応募、お待ちしています。

詳細はこちら

取材・文 / 中前 結花  撮影 / 真田 英幸

【連載】わたしのHANDMADE AWARD
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