ガンメタルグレイに古代西アジアを取り合わせた手描き友禅のジャケット

１９７０年代以前の日本には、染め色として存在しなかった砲金色（つつがねいろ）と呼ばれる濃いグレイ。 古代オリエントの狩猟文や、樹下の駱駝を陶器の模様として描き、ガンメタルグレイの地色に染め上げてしまうなんて。 それはもう度胸の据わった組み合わせに、モダンという言葉すら失ってしまいそうです。 農耕民族である日本では、馬上から獅子（ライオン）を射かけることもなければ、チャリオットと呼ばれる戦車で戦うこともありませんでした。 流鏑馬（やぶさめ）は神事として残りましたが、古代エジプトの壁画などに見られる、馬で曳く戦車はついに実用化されなかった。 きっと、走り回って敵を倒すには、山と谷が多すぎたのでしょうね。 世界中から憧れられる山紫水明の国、日本。 砂漠の民がオアシスの、わずかに息づく樹木を聖木として大切に思う気持ちと、私たちが鬱蒼とした鎮守の森を敬愛するのは同じだと思います。 ペルシャの影響の色濃い絵柄を、友禅染めで訪問着に収めてしまうその器量。 良き時代の大胆な着想を、モードなジャケットとしてお召しになってください。