「まぁ、お祖母様、とっても素敵なブローチね」
孫娘の声に、自分がブローチを手にしたまま呆としていたことに気付く。薄紅色の土台に、白い桜の花が彫られた意匠のカメオ。やや古びてはいるが十分に美しいその品は、もう何年も手に取ることもなく、引き出しの奥に仕舞い込んだままにしていた。
「お祖母様ったら、どうなさったの?ぼうっとして。もしかして、どなたか想う殿方からの贈り物かしら?」
孫娘の目がきらきらと輝いている。これは、逃がしてくれそうもない。
「そうねぇ、確かに殿方からの贈り物ね」
「やっぱり!お祖父様から…ではなさそうに見えるのだけれど?」
早く話せとその目が訴えている。
「これはね、私がお祖父様と結婚する前に頂いた物よ。実はお祖母様はね、お祖父様と結婚する筈ではなかったの。別に結婚を決められた方がいてね。ただ、その方がお国の都合で欧州に留学することになってしまって。帰国後に改めてということに決まったの」
初めて聞く話に、孫娘は不思議そうな顔で小首を傾げる。
「それから何箇月かして、無事を知らせる手紙と、知らせが遅くなったお詫びにと、このブローチを贈ってくださったの」
目を閉じて贈り主の面差しを思い浮かべてみる。
「でも、その方が戻ってくることはなかった」
「まさか、亡くなってしまわれたの…?」
「さぁ、どうなのかしら。その方は、異国の地で行方知れずになってしまったの」
「お祖母様は、その方のことをお慕いしていたの?」
「どうかしらね。数度しかお会いしたこともなかったし。そういえば貴女、可愛らしい髪飾りね。」
今にも泣きそうな顔をした孫娘の髪を撫でようとして、その髪を飾っている大振りのリボンに気付いた。リボンには桜の柄が描かれている。
「そうだわ、これは貴女に差し上げましょう。そのリボンにこうやって刺すと、華やかになってとっても素敵よ」
私は清々しい気分で孫娘に笑いかけた。
*❀*❀*❀*
桜柄の華やかなリボンを使ったヘアゴムです。
黒レースのリボンを重ねることで、華やかでありながら、落ち着いた印象に。
別売りの「桜の骸」と合わせてお使いいただくのもお勧めです。
【サイズ等】
大(〇):125㎜×58㎜
中(〇):90㎜×50㎜
小(〇):66㎜×45㎜
貴女の忘れえぬ人は誰ですか?
「まぁ、お祖母様、とっても素敵なブローチね」
孫娘の声に、自分がブローチを手にしたまま呆としていたことに気付く。薄紅色の土台に、白い桜の花が彫られた意匠のカメオ。やや古びてはいるが十分に美しいその品は、もう何年も手に取ることもなく、引き出しの奥に仕舞い込んだままにしていた。
「お祖母様ったら、どうなさったの?ぼうっとして。もしかして、どなたか想う殿方からの贈り物かしら?」
孫娘の目がきらきらと輝いている。これは、逃がしてくれそうもない。
「そうねぇ、確かに殿方からの贈り物ね」
「やっぱり!お祖父様から…ではなさそうに見えるのだけれど?」
早く話せとその目が訴えている。
「これはね、私がお祖父様と結婚する前に頂いた物よ。実はお祖母様はね、お祖父様と結婚する筈ではなかったの。別に結婚を決められた方がいてね。ただ、その方がお国の都合で欧州に留学することになってしまって。帰国後に改めてということに決まったの」
初めて聞く話に、孫娘は不思議そうな顔で小首を傾げる。
「それから何箇月かして、無事を知らせる手紙と、知らせが遅くなったお詫びにと、このブローチを贈ってくださったの」
目を閉じて贈り主の面差しを思い浮かべてみる。
「でも、その方が戻ってくることはなかった」
「まさか、亡くなってしまわれたの…?」
「さぁ、どうなのかしら。その方は、異国の地で行方知れずになってしまったの」
「お祖母様は、その方のことをお慕いしていたの?」
「どうかしらね。数度しかお会いしたこともなかったし。そういえば貴女、可愛らしい髪飾りね。」
今にも泣きそうな顔をした孫娘の髪を撫でようとして、その髪を飾っている大振りのリボンに気付いた。リボンには桜の柄が描かれている。
「そうだわ、これは貴女に差し上げましょう。そのリボンにこうやって刺すと、華やかになってとっても素敵よ」
私は清々しい気分で孫娘に笑いかけた。
*❀*❀*❀*
桜柄の華やかなリボンを使ったヘアゴムです。
黒レースのリボンを重ねることで、華やかでありながら、落ち着いた印象に。
別売りの「桜の骸」と合わせてお使いいただくのもお勧めです。
【サイズ等】
大(〇):125㎜×58㎜
中(〇):90㎜×50㎜
小(〇):66㎜×45㎜
貴女の忘れえぬ人は誰ですか?