壁掛け時計” The Golden Path”

今思えばこれが一番最初に創作した作品になります。 4年ほど前、自室を新調しようとほぼ一から家具や雑貨を買い集めていたのですが、 ELLE　DECORやCASA BRUTUSなんかのハイセンスなインテリア雑誌の存在を知り 読み耽っていた僕は、人が持っていない様な自分だけの「いわく」のある品物に 強い憧れを抱いていました。お店に出向いてそれらしい物をお金で買って 飾って終わり、ではなく、物としての役割以上の意味を持つ、ゆかりというか、 身の回りを取り巻く物と自分の間に物語を築きたい。 そんな風に無性に意識していた時期でした。 恐らくそんな趣向になっていたのは、ただ雑誌に感化されただけではなく、 当時興味本位でDIYでの石窯づくりに挑戦し、それが上手く行った事で自分で 物を作るという事に自信が付いたから、という理由もあるのでしょうが。 ともかくそんな頃に制作した物でして、ふと我ながら斬新な時計のアイデアが 思いついてからというもの、自分を勢いのまま興奮に身を任せ、 あっという間に完成させた時の熱量を今も覚えています。 この時計は黄金長方形をかたどった黄銅をレーザーで抜き取り、磨いて蜜蝋で仕上げた ローズウッドの一枚板と重ね合わせた作品になります。 黄金長方形とは縦と横の長さが1:1.618の比率となっている長方形の事で、 人間が最も美しいと思う長方形と言われています。 そしてこの黄金長方形の中に線を一つ足して正方形を作ると、余白の部分もまた 黄金長方形になり、理論上これを無限に繰り返すことが出来ます。 さらにこの正方形の一辺を半径とした扇型を書いてみると、画像の様に 螺旋を描く事が出来るのです。 無限に渦巻く黄金長方形の螺旋に、永遠に続く時の流れと、 その流れを示す回転する時計の針とかけまして、誰も見たことのない時計とときました。 名前はThe Chemical Brothersの曲名から拝借して” The Golden Path” どこまでも続く路を駆けるような、高揚感のある音楽です。