ー メデューサ編 ー
その目を見た瞬間、冷たいものが背中を走って私は思わず目を背けた。
何故かわからない。得体の知れぬ恐怖が頭の中で警報鳴らしていた。
見たくない。
見ない方が良い。
なのに、意識が何故か吸い込まれていく。
見てはいけないと思えば思うほど、
恐怖に反して視線がそちらに吸い込まれていく。
フー…フー…
自分の呼吸が大きく聞こえる。
耳の中に自分の呼気が響いて煩い。
フー…フー…
目が吸い込まれる。
ダメだ、見てはいけない。
意思に反して首がゆっくり、そちらへ動いて行く。
視線が吸い込まれる。
フー…フー…
ダメ、やめて…っ
フー…フー…
イヤ…ッ!
フー…フー…
再び女性と目が合った。
フ……………
生きていた。
物言わず、意思を持たない無機質な石から出来ているはずなのに、
人の形をしているというだけでまるで命を宿しているかのように。
彼女の目は生きていた。
見れば見るほど、吸い込まれる感覚に捕らわれるほど、その目は生気を帯びていた。
助けを求めているような、目。
動き出して私にその手を伸ばし、助けを求める。
ーーーーー助けて、助けて、ここから出して……
石化した腕が、手がこちらへ伸びる。
ーーーーーお願い、助けて、帰りたい
ぎこちない動きで、がりがりと伸びる。
ーーーーー助けて、貴女も一緒に
目が私を捉えている。
手足から血の気が引いていく。
動けない。
まるで体が石になっていくように。
動かない。
カリカリッ…
無機質な石の冷気が顔に、肌に触れて。
『貴方も一緒に石になりましょう……?』
「ッ………!」
短く息を吸って、思わず私は後ずさった。
「はぁっ、はぁっ、はぁっ………!」
呼吸が荒い。
いつの間にか、呼吸することを忘れていたようだった。
顔を上げると、
目の前の女性の像は、最初と変わらぬ姿でそこに佇んでいた。
緑の草原を、
暖かい春の風がそよいだ。
今のは一体……
ー抜粋ー