作品説明
星の良く見える夜、月が薄闇を纏ってしばし幕の向こうへ身を隠していたころ、
私はいつものように日々の中で拾い集めたあれこれを想い、
考えに胸を詰まらせたり憂いたりしながら星を見ていたのです。
お守り代わりに握っていたムーンストーンを星明りに翳して、
白いつややかな肌に薄付きの光が走るのを眺めたり、
マジカルオイルを塗っておいたキャンドルの光を透かして、
橙色に温まった透過光とその香りに心預けたりして、
すべてが心穏やかに進んでいくことを願っていました。
星が流れ、はっとした瞬間に手から滑り落ちた月長石は地に落ちて割れ、
宿っていたような光がギラッと放たれたように思いました。
砕けてしまった大切な石を拾いあげ、手の中で転がして残念さに目をつむると
何かが私の指を咬んだ様な痛みが走りました。
驚いて手のひらに視線を落とすと、人差し指を両手で抱えて指を食んでいる白いコウモリがいました。
「ねえあなた…なんでも思い通りになればいいって思ってるんでしょう?
ほしい人が手に入ればとか、もっと認められたいのにとか、
心配事がなくなればいいとか…。悪いところが良くなればいいなとか、
あの人がもっと幸せであればいいとか。ずいぶんと欲張りなんだね。
でも、僕が叶えてあげてもいいって思ってるんだ。
その代わり僕にたっぷりあなたの血をだね…」
私は何か嫌な予感がして、十字架のチャームをコウモリの胸元に取り付けました。
何か悲鳴が聞こえて彼はジタジタしていましたが、瞼のシャドウとよく似合うよというと
意外にもはにかんで黙ってしまいました。
彼は「チャンドラ」と名乗りました。
私の人差し指をひとなめして肩に飛び乗ると、右耳の大穴のピアスに手をかけて
「僕が悪いものから見張っててあげるよ」とささやいて
私の後ろ髪に入っていったと思うと姿を消してしまいました。
我に返って視線を手のひらに戻すと、握られていたはずの石と、
今までそこにあった美しい月もいつの間にかいなくなってしまっていました。
しん…と静かな部屋の中には、マジカルオイルの香りと混じって
ほんの少し、硫黄のような香りが何かの訪れは夢でないと訴えるように漂っていたのです。
http://hoshijima.blog.fc2.com/blog-entry-204.html
星の良く見える夜、月が薄闇を纏ってしばし幕の向こうへ身を隠していたころ、
私はいつものように日々の中で拾い集めたあれこれを想い、
考えに胸を詰まらせたり憂いたりしながら星を見ていたのです。
お守り代わりに握っていたムーンストーンを星明りに翳して、
白いつややかな肌に薄付きの光が走るのを眺めたり、
マジカルオイルを塗っておいたキャンドルの光を透かして、
橙色に温まった透過光とその香りに心預けたりして、
すべてが心穏やかに進んでいくことを願っていました。
星が流れ、はっとした瞬間に手から滑り落ちた月長石は地に落ちて割れ、
宿っていたような光がギラッと放たれたように思いました。
砕けてしまった大切な石を拾いあげ、手の中で転がして残念さに目をつむると
何かが私の指を咬んだ様な痛みが走りました。
驚いて手のひらに視線を落とすと、人差し指を両手で抱えて指を食んでいる白いコウモリがいました。
「ねえあなた…なんでも思い通りになればいいって思ってるんでしょう?
ほしい人が手に入ればとか、もっと認められたいのにとか、
心配事がなくなればいいとか…。悪いところが良くなればいいなとか、
あの人がもっと幸せであればいいとか。ずいぶんと欲張りなんだね。
でも、僕が叶えてあげてもいいって思ってるんだ。
その代わり僕にたっぷりあなたの血をだね…」
私は何か嫌な予感がして、十字架のチャームをコウモリの胸元に取り付けました。
何か悲鳴が聞こえて彼はジタジタしていましたが、瞼のシャドウとよく似合うよというと
意外にもはにかんで黙ってしまいました。
彼は「チャンドラ」と名乗りました。
私の人差し指をひとなめして肩に飛び乗ると、右耳の大穴のピアスに手をかけて
「僕が悪いものから見張っててあげるよ」とささやいて
私の後ろ髪に入っていったと思うと姿を消してしまいました。
我に返って視線を手のひらに戻すと、握られていたはずの石と、
今までそこにあった美しい月もいつの間にかいなくなってしまっていました。
しん…と静かな部屋の中には、マジカルオイルの香りと混じって
ほんの少し、硫黄のような香りが何かの訪れは夢でないと訴えるように漂っていたのです。
http://hoshijima.blog.fc2.com/blog-entry-204.html