ひと皿のよる

2016年7月に開催した個展で販売した詩のzineです。 かなしみの向こうに見えたひかりから生まれた言葉を一冊に綴じました。 前作品から少し顔をあげ、希望の見える作品となりました。 全編トレーシングペーパーに印刷し、ハトメで留めリボンを結んだ繊細なお作りの愛らしいzineです。 〈収録作品〉 ベガ 儀式 なみだ 6等星 真夜中の手紙 ピクニック ひかりの粒 ここにいる 一直線 白木蓮 晩餐 カヌレ ふるさと オアシス 向こう岸 サクラメント ひと皿 青い夜を想った あの頃 きやきや 　あとがき ＊＊＊ 暮らすという旅のいたるところにやわらかな毛布のような手触りをさがしている ― なみだ ― 道ばたで天使にあってもわたしにはもうわからないし、クリームソーダの泡に神さまを見つけることももうできないかもしれないけど、むかし海で拾ったガラスを宝石みたいにおもってたいせつに瓶にしまったときのきもちはずっと忘れてない ― 一直線 ― かなしいとき、目を閉じると 深い夜に建つちいさなひとつの観覧車が見える ゴンドラのはなつ七色のひかりに向かって、 はだしのままゆらゆら歩いてゆく ひとは灯りのともる場所でしか生きられなくて、 その灯りは闇の中でしかかがやけない それを思い出したくて、いつもせかいからそっと目を閉じる ― オアシス ― 　　(以上、すべて本作品より) ＊＊＊ 全20編･B6版 2016年7月1日　第一刷発行