ひと筆ひと筆、確実に筆を重ねる画家小山佐敏の魅力

コンピュータ専用ソフトを使用する、あるいはコンピュータ上でCGとして合成する、またそれ以前はエアーブラシを多用することがトレンドになったりと、画やイラストを描く方法は時代とともに変化しより手軽にかつリアルに自由自在に私たちは仮想世界を体験できるようになっています。 小山佐敏も大都市のビル群を自由に操り、大地を這わせ、うねり、集積させ、離合集散を繰り返しダイナミックに変化する仮想世界を描くという画風から、ＣＧなどなんらかのかたちでコンピュータを介在させる、もしくはディテールの細かさからエアーブラシを使った画だと誤解する方も近年は多くなってきています。 小山が画家として活動を始めたのは1970年代半ば。その後村上龍の『コインロッカー・ベイビーズ』（講談社刊／1980年10月28日発行）の表紙に採用されその小説の内容とも相まって鮮烈な印象を与え彼の画は認知度を高めましたが、それ以前もそれ以降も彼の画はコンピュータは介在させずに彼の頭の中でのみ構成され、アクリルや水彩などの絵の具を使い、ひと筆ひと筆、彼の手によって描き上げられ表現されているものです。 よって彼の画はまさに〈手描き〉。かなりローテクではあるけれど、想像力を刺激される従来の手描きの醍醐味を感じていただけば幸いです。