カッティングボードができるまで

カッティングボードができるまで

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「板を切っただけなのに高いね〜」 イベント会場で時々そんなことも言われたりします。 確かに、私も物作りをしていなかったら同じように思ったかもしれません。 また、その逆で「丁寧に作っているのに安いね〜」っておっしゃる方も多いです。 この違いは何か。 それは、物が出来るまでの「行程」と完成までの「労力と時間」を知っているか否かです。 またはそれを想像できるかどうかだと思います。 ここをご覧になっている方は「手づくり」「ハンドメイド」をよくご理解している方だと思いますし、 大量生産品にはない一品物を手にする喜びを知っている、素晴らしい感性の持ち主の方だと思います。 嬉しいことに、そういった方々が年々増えてきています。 そう、気がついたのだと思います。今までのモノの価値観や価格の不自然さ、 本当に自分が欲しいもの、そしてそれが量産品には無いことを。 多くを語る必要はないとは思いますが、この機会に簡単にご紹介いたします。 *板を切るだけでは滑らかで美しいカッティングボードにはならない* ホームセンターなどでは見かけることは殆どない、広葉樹を製材したままの原木。 写真のような数年乾燥させた木材を広葉樹専門の木材屋さんから仕入れます。 基本的に国産広葉樹は東北、 特に寒く厳しい地方で育った年輪の密な岩手県産の木材を使用しています。 1枚が長さ2メートル以上で幅は20センチから50センチ、厚さも3〜5センチと様々。 1枚の重さは女性がやっと運べる位の重さです。 私の小さな工房では運び入れるのも困難な重さと長さです^^; 初めて見る方は、ここから滑らかなカッティングボードが出来るとは到底思えないほど、 表面はガサガサでささくれ立って、染みや反り、曲がりが凄い事になっています。 ここから、どんな大きさや厚さ、どんな形にするか考え、 そしてどこを切るか考えます。 必要な大きさにカットした木材は当然ガサガサのままですし、 お椀のように反ってたり、ねじれたり、刀のように曲がっていたり。 まっすぐで平らな場所は少しもありません。 そこからカンナをかけて平面、一定の厚さにしてから目的のアウトラインに切ります。 厚さが厚い場合は、挽き割って半分の厚さにする時も多いです。 そして、1回目の粗いヤスリがけ、角を丸くするアール加工。 焦げるときがあるので焦げも丁寧にヤスリがけ。 次に水引き。ヤスリがけである程度奇麗にしたのに「水」を刷毛で塗り翌日まで乾燥させます。 これは木の繊維を濡らして予め起こしておき、 実際にお使いになるときになるべくガサガサしないようにするためです。 この水引きをやっていない作家さんも多いです。面倒ですし1日失いますから^^; その起きた繊維を今度はもっと細かいヤスリで研磨し、さらにもっと細かいヤスリで研磨。 木にそこまで細かいヤスリがけは必要ないとおっしゃる方も多いのですが、 私はそうは思いません。 それは私の前職でのノウハウや趣味の工作、そして長年実践してきた結果、 手間はかかりますが、やるのと、やらないのでは大きな差があると確信しているからです。 手に取った時の感触と感動を感じて頂くには、どの行程も省くことは出来ないのです。 最後は角や穴の周り、くびれた場所などを同様の回数のヤスリがけを手作業で行います。 仕上げは蜜蝋ワックスを塗布して拭き上げて、数日乾燥させて完成です。 実際はもっともっと細かい行程があるのですが、ざっくり説明するとこんな感じです。 20枚のカッティングボードが「加工だけで」10日以上かかる時もあります。 そして最後にデザイン。 誰が作ったどのカッティンングボードも似ています。 確かに四角だったり、持ち手があったり、曲がっている面白いデザインだったり。 「まな板」としてのデザインには限界があり、誰が作ってもある程度似てしまうのは至極当然。 しかし、よく見てみてください。持ち手の首の部分が滑らかなアルールで繋がっている、 全周全てが滑らかに面取りしてある。それが加工に1日、2日かかってしまうとしても、 そうしたちょっとしたデザインの違いが、 カッティングボードの雰囲気や印象に大きく関係しています。 丸っこいデザインもエッジの効いた角張ったデザインも私はどちらも好きで作っています。 そしてその「板を切っただけ」のカッティングボードの中にも、 その作品を誰が作ったものなのか一目で分かるほどの個性を放っています。

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