〘まんなかハートのしずく〙
紫陽花がしっとり咲く、しずくガーデン。
梅雨の合間、やさしい光が差し込む朝のことでした。
ぽつん、と。
その丘の隅っこに、ちいさなうさぎちゃんが座っていました。
「なんで涙って出るのかな」
「どうして心って、しずくになるのかな」
そうつぶやきながら、うさぎちゃんは空を見上げていたのです。
すると——
ふわり、ふわり。空から白い羽のようなものが降りてきました。
それは、ちいさなシマエナガの《ゆきのんちゃん》。
胸には、ぽっと赤ピンクの“まんなかハート”が灯っています。
「しずくが出るってことはね」
「心がちゃんと生きてるってことなんだよ」
そう言って、ゆきのんちゃんは、うさぎちゃんの隣にちょこんと座りました。
するとふしぎ。
白い紫陽花が、ふたりのまわりでそっとほほえみ、
花びらの先に、やわらかい光がにじみました。
うさぎちゃんの目にたまっていた涙もしぜんに、ぽとり。
けれど、そのあとに広がった気持ちは——
なんだか、あたたかくて、まっさらでした。
「心のしずくも、まんなかハートに戻っていくのかな」
うさぎちゃんがそうつぶやくと、
ゆきのんちゃんはにっこりして、ちいさくうなずきました。
誰かが涙をこぼしたあと、
そこには、まんなかハートのあたたかい光が——ぽっ。