インタビュー

ミツロウキャンドル作家のakarizmさん「ものではなく、体験を売りたい」

ミツロウキャンドル作家のakarizm(アカリズム)さんは、大学時代に出会った“ミツロウ”の魅力にとりつかれ、いつしか自然とキャンドル作家の道へ。まだまだ認知度が低いミツロウ。akarizmさんは、ミツロウをみなさんに知ってもらいたいという思いから、精力的にワークショップなどを開催しています。

ミツロウキャンドル作家のakarizm(アカリズム)さんは、大学時代に出会った“ミツロウ”の魅力にとりつかれ、いつしか自然とキャンドル作家の道へ。まだまだ認知度が低いミツロウ。akarizmさんは、ミツロウをみなさんに知ってもらいたいという思いから、精力的にワークショップなどを開催しています。

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自然素材から感じるストーリー

もともと、ものづくりには興味があったんですか?

akarizm ものづくりということでいうと、大学のデザイン科に進学したのがはじまりです。高校時代に、実家の建て替えという一大イベントがあったのですが、そのときに内装のことに興味をもち、住環境デザインの大学に進学しました。しかし、思い描いていた大学生活とは少し違っていました。学校で学ぶことといえば、1/200の小さな建築模型をつくることばかり。また、その模型を作る材料がスチレンボードという人工的なもので、つくっていていい気持ちはしませんでした。「"1/1スケール"のものを”自然素材”でつくりたい」大学2年生の終わりのころにはそう思うようになっていました。

たまたま同じことを考えている仲間がまわりにたくさんいたので、大学の近くに生息していた“ヨシ”という植物を使って、共同で作品をつくったりしていました。そのとき改めて「自然素材を使ってものづくりをするって気持ちがいいな」と感じたんです。湖があって、水があって、そこにヨシが生息する…そのストーリーや、自分と自然との関わりが感じられて、すごく心地がよかったんです。

“ミツロウ”との意外な出会い

ミツロウとの出会いはいつごろですか?

akarizm ちょうどそのころ、環境活動やスローライフの提案をしている「ナマケモノ倶楽部」というNGOの活動をはじめていました。そのつながりで、ミツロウを輸入していた方と出会ったんです。しかし、そのころは将来自分がミツロウを使ったろうそくをつくるようになっているなんて、まったく想像していませんでした。

大学卒業後は、照明メーカーへ就職しました。もちろん、デザインがやりたくて入社したのですが、私の考えが甘かった…。大手ゆえに、自分が希望した仕事ができるはずもなく、悶々とした日々を過ごしていました。当たり前なんですが、照明メーカーにいらっしゃるお客さまは、とにかく暗いことを怖がるんですね。とにかく明るければ明るいほどいいみたいな(笑)。そうしているうちに、原始的な灯りである、ろうそくに興味を持つようになりました。

ろうそくをつくるようになったきっかけは何でしたか?

akarizm 会社員時代にパラフィン(大量生産された石油製品)を使ったキャンドルづくりの教室に通いはじめました。そのときは単純に「趣味がほしい」という動機だったので、起業するなんて考えてもいませんでした。何度か通って作品がつくれるようになると、友達にプレゼントするとすごく喜んでもらえたりして。すごくうれしかったし、楽しかったです。

その後、照明メーカーを退社しましたが、先のことは何も考えていませんでした。資格をとってみたり、学校へ通ってみたり…煮え切らない毎日を送ってた最中に、「ナマケモノ倶楽部」で有給スタッフを募集するプロジェクトが立ち上がったんです。日本各地で地域に根付いた産業で頑張っている人と、子供たちをつなぐ活動をしながら日本を縦断するプロジェクトだったのですが、チームの一員として参加することを決意。その活動の中で色んな人との出会いがあり「どんなことを生業にしても生きていけるんだ!」と、自分の中で人生のヒントをもらったような気がしました。そのプロジェクトが終わった後、すぐにakarizm(アカリズム)という屋号でろうそくづくりをはじめました。

akarizmを立ち上げてからの活動を教えてください

akarizm 立ち上げた当時から、パラフィンは絶対に使いたくないと思っていました。すぐにミツロウを輸入している知り合いに連絡して、分けてもらうところから活動ははじまりました。実はそこからミツロウの勉強をはじめたんです。「ミツバチが好きだからミツロウでろうそくをつくっているの?」と聞かれることが多いのですが、実は逆なんです。ミツロウを知ってから、ミツバチのことをいろいろ調べていくうちに、すごく面白いな、と思ったんです。

ミツバチが蜜を集めるためには、太陽が照って、雨が降って、土に微生物がいて、植物が育って、蜜が出る花を咲かせないといけません。ミツバチがその蜜を集めて、水分を飛ばし体内の酵素を混ぜてハチミツに加工します。そのハチミツをまた体内に戻して加工し、やっとミツロウができるんです。さらに、ミツバチが飛びまわって受粉を促すことで、私たちが野菜や果物を食べることもできる。そういう自然界のつながりの中のひとつにミツロウがある。その物語がたまりませんよね。

もっとミツロウを皆さんに知ってもらいたいので、ワークショップのときには紙芝居で“どうやってミツロウができるのか”をレクチャーします。また、もともと一般的には馴染みのないミツロウですが、今までミツロウのろうそくといえば、シンプルなもので、素材のよさを売りにしているものがほとんどでした。それでは、たくさんの人に興味を持ってもらうことができにくいと思ったんです。だから私は、見た目もかわいいキャンドルをつくって、たくさんの人にミツロウを知るきっかけになってもらえればと思っています。

キャンドルの本当の楽しみ方

キャンドル作家としてのやりがいって何ですか?

akarizm どんな仕事でもそうだと思うんですけど、誰かに喜んでもらえたり、役に立ってると感じたときですよね。自分の伝えたいことに沿ったものをつくれていますし、ワークショップではそれを皆さんに実際に伝えることができているので、とてもやり甲斐を感じています。

ただ、私は自分をアーティストだとは思っていないんです。だから、私の作品を買っていただいて「大事に飾っています」と言われると少し複雑な気持ちになるんです(笑)。灯したときの面白さや、灯して過ごす時間を想像しながら制作していますし、飾るだけでしたら芯はいらないですからね。ろうそくは、暗闇の中で使わないといけないという固定観念をもっている人が多いと思うんですが、そんなことはありません。明るい場所でも、何なら朝のろうそくもいいものです。

今後の展望を教えてください

akarizm 本を出したいと思っています。これまでに、簡単なレシピブックやパンフレットはつくりましたが、やはりそこではすべては伝えきれませんし、たくさんの人にミツロウを知ってもらいたいという気持ちがあるからです。


プロフィール

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akarizm(アカリズム)さん

ミツロウキャンドル作家。ミツロウキャンドルの企画・制作・販売(卸・イベント出店)など。自然の恵みがつまったミツロウの灯りを広めるために、精力的にワークショップも行っている。

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