あの人の作業机​​ vol.31 陶作家・陶ノ鳥ひよこや

作り手が日々向き合う机の上には、こだわりの道具たちが所狭しと並んでいます。気になるクリエイターのみなさんにお声がけし、作業机や作業部屋を見せていただくことに。今回は、 和菓子屋さんから譲り受けたひよこ饅頭の型を使って陶のひよこを手がける、陶ノ鳥ひよこやさんの机です。次にここから生まれるのは、どんな作品でしょうか。

陶ノ鳥ひよこや
和菓子屋さんから譲り受けたひよこ饅頭の型を使い、陶のひよこを制作。
https://minne.com/@hiyoko-ya

土間のあるアトリエ

いつから、この作業部屋を使われていますか?

陶ノ鳥
ひよこや
このアトリエは、2年前に新居を建てたときにできました。作業机は6年ほど愛用しているもので、以前通っていたセレクトショップのオーナーさんから譲っていただいたアアルトのテーブルです。真っ白な天板と、広い作業スペースが制作にぴったりなんです。
 
ここは土間ですか...?

陶ノ鳥
ひよこや
そうなんです。アトリエの3分の1ほどが土間になっており、土間スペースでは主にひよこのやすりがけ作業を行なっています。
 
ひよこやさんの制作活動にぴったりなアトリエに設計されているんですね。

「解放」と「集中」

他にも作業環境のこだわりなどはありますか?

陶ノ鳥
ひよこや
わたしは作業に没頭するタイプなので、作業机の上には必要最低限の道具だけを並べます。ラジオや映画を流すこともありますが、作業をしているうちに集中していつの間にか何も聞こえなくなっていることが多いです(笑) 。
 
集中できないときなどの気分転換はどのようにされていますか?

陶ノ鳥
ひよこや
新作のデザインを考えるときは別の部屋に移動したり、ときには外を散歩することもあります。鳥類図鑑やインターネットで調べた画像を参考にしつつも、「ひよこやらしい」デザインになるように気分転換をしながら何度もスケッチを描きます。

陶ノ鳥
ひよこや
ある程度デザインが決まったら、アトリエで黙々と絵付けをしていきます。こんな風にアトリエの外と中で「解放」と「集中」を無意識に使い分けているような気がします。
 
ひよこやさんのメリハリのついたスタイル、とっても憧れます。
 アトリエの中でお気に入りのコーナーなどはありますか?

陶ノ鳥
ひよこや
作業机の上に余計なものを置かない分、棚や窓辺には好きなものをたくさん並べています。よく読む本や、好きな作家さんの絵やオブジェを飾ったり、窓際には散歩中に拾った枝や石なども置いていますね。

綺麗に整列している石が愛おしいですね。

陶ノ鳥
ひよこや
子どもの頃からなぜか石を拾うのが好きで、お気に入りがたくさんあるので、アトリエには「石を並べるための窓」をつくってもらったんです。

陶ノ鳥
ひよこや
ときどき、気分や季節に合わせて飾る石を変えて模様替えを楽しんでいます。

世界にひとつの大事な相棒

こちらの棚は作業道具などが収納されているんでしょうか。味わい深い引き出しでとっても素敵ですね。

陶ノ鳥
ひよこや
ありがとうございます。細かい道具が多いので、古家具の小引き出しに種類別にしまっています。30個ある引き出しにそれぞれ何が入っているかをラベリングしているので、必要なものを引き出しごとさっと出せるのがお気に入りです。
 
作業机にいつも置いている「スタメン」のようなアイテムはありますか?

陶ノ鳥
ひよこや
わたしのいちばんの相棒は、このひよこ饅頭の木型です。昔和菓子屋さんで使われていた道具を譲り受けて使用しています。ひよこやの鳥たちは全て、この木型に丸く成形した土をこめて型取りしています。その様子はまるで、卵からひよこが産まれるみたいなんですよ。
 
木型がとってもツヤツヤしていて、大切に使われていることがうかがえますね。

陶ノ鳥
ひよこや
世界にひとつの大事な相棒なので、定期的に蜜蝋を塗るなどメンテナンスも欠かさないようにしています。
 
制作に使用する道具は普段どのように選ばれていますか?

陶ノ鳥
ひよこや
絵筆は陶芸用にこだわらず、いろいろな細さや毛質を試してみます。例えば、パステル画のぼかし用の筆を使うと、色のつき方が不均一になって、ふわっとやわらかいテクスチャーを表現できたり。思いもよらない発見があるので、画材屋さんへ行くのは楽しみのひとつでもあります。
 
たくさんの道具を試してみるからこそ、ひよこたちにもさまざまな表情が生まれるんですね。
 
最後に、作品制作で大切にしていることをうかがいました。

陶ノ鳥
ひよこや
「温度」のある作品をつくることです。

例えば、作業効率を考えると、型自体を石膏などでたくさんつくれば一度につくれる量も増え、形も均一化します。また、中を空洞にする鋳込み(いこみ)という技法を使えば、制作時間も大幅に短縮できます。

でも、木型に手作業で土を込めてつくるからこそ、同じ型からできたひよこもひとつひとつ微妙に異なり、それぞれに合わせて表情をつけることで、同じものがふたつとない作品になります。
そして、中身がつまった無垢のひよこは、手に乗せるとずしっとその重みを感じます。お客さまからよく「眺めているとほっこりします」「癒されます」というご感想をいただくのですが、それは「そこに存在するという感触=温度」のようなものを作品から感じとっていただいているのだと思います。

日常のふとしたとき、ほっと気持ちを解いてくれるような作品を、これからもつくっていきたいです。

ショップを見る
 
取材・文/中村瑛美里

今後もminneとものづくりとでは、みなさんの「作業机」を募集しております。「#わたしの作業机」(「#minneとものづくりと」をお忘れなく!)の投稿をお待ちしております。

「minneとものづくりと」の更新情報や募集情報はこちらをチェック
minneとものづくりと公式アカウント