特集

手作りPOPとSNSで心を掴む。「有隣堂 藤沢店」の人と本をつなぐ取り組み。

イラストが添えられたユニークなPOPやクスッと笑えるTwitterの投稿。書店員さんの人柄が見える販促がおもしろい、と話題になりはじめている、有隣堂 藤沢店さんにお話をうかがいました。緊急事態宣言を受けた臨時休業中も休まず行われていた、Twitterを活用した書籍紹介についてもお話いただいました。

「書店ディスプレイコンクール」にて


テーマとなる1冊の本を設定し、その書籍をイメージした店頭ディスプレイで入賞店を決める、「書店ディスプレイコンクール」。KADOKAWAさんが主催され、対象は店頭ディスプレイを手がける、全国各地の書店です。

今年の3月、『minneとものづくりと』で公開した、小説家・村田沙耶香さんの取材記事が縁となり、村田さんの最新作『丸の内魔法少女ミラクリーナ』を対象書籍とする書店ディスプレイコンクールの審査に、われわれ編集部も携わらせていただくこととなりました。
そして、その「minne賞」を受け取っていただいたのが、神奈川県の「有隣堂 藤沢店」さんです。

手作りのPOPはどれもユニークで、Twitterの運用がなんともおもしろい。
そんな「有隣堂 藤沢店」の髙橋さんに、今回、書店づくりのお話をうかがってみました。

店頭を彩るPOPたち


今回は『丸の内魔法少女ミラクリーナ』書店ディスプレイコンクールの受賞、おめでとうございます。「minne賞」をぜひ受け取っていただきたかったので。
髙橋さん
ありがとうございます。実際にあのディスプレイを手がけたのは、ほかの書店員なのですが、とてもたのしく取り組んでいたので受賞を聞いて喜んでいましたよ。
実際に使われたポップ
 
展開の規模はそれほど大きなものではありませんでしたが、書店員さんのやりとりが描かれたユニークなポップがとても魅力的でした。
髙橋さん
ありがとうございます。村田沙耶香さん作品の、キュートでお茶目で少し毒があるところを装飾とPOPで表現しました。

有隣堂 藤沢店さんは、店舗のいたるところに可愛らしい装飾とおすすめポイントや感想が添えられた、個性豊かなPOPが並んでいます。

わたし自身本屋にはよく足を運びますが、有隣堂 藤沢店さんは特にPOPをたくさん活用されている印象がありました。
髙橋さん
たしかにそうですね。なかでも『丸の内魔法少女ミラクリーナ』のディスプレイを担当した、文芸書担当・佐伯は、POPマイスターとしてお客さまにおすすめしたい商品をイラスト入りでPOPに表現し量産し続けているんです。
イラストのほっこりさも魅力のひとつですが、店員さんの推しポイントがわかりやすく、本選びがたのしくなりそうですね。POPを見ると、書店員さんと直接会話しているような気持ちになりました。
髙橋さん
各売り場担当者が自由にPOPを作成しているので、書籍のコーナーによって全くカラーが違うんです。ぜひご来店の際にはPOPにも注目していただけるとうれしいです。

Twitter活用に込めた思い

有隣堂 藤沢店公式Twitterでは、書籍の紹介やイベントの紹介、地元の情報などを書店員さんが更新されています。

日々たくさんのツイートをされていますが、Twitterはどのように運営・管理されているんですか?
髙橋さん
専任のSNS担当がいるわけではなく、社としてのSNS運用ルールに基づいて、各売場担当者が思い思いに、お客さまに心からおすすめしたいものをツイートしています。

書籍の紹介とともに添えられている感想コメントは、書店員さんの人柄が見えとっても好きです。売り場担当の方々が担当しているからこそ、個性豊かなツイートが集まっているんですね。

有隣堂 藤沢店さんのPOPのファンになってしまっていたので、TwitterでもPOPを拝見できるのはとってもうれしいです…(笑)。
髙橋さん
わあ、ありがとうございます。実際に店舗は商品入れ替えとともにPOPも差し替えてしまうので、制作したものをTwitterに残せる、というのは書店員としてもありがたいことかもしれません。

たまに見かける書店員さんのランチシリーズ。書籍紹介だけでなく、クスッと笑えるツイートが挟まれるのも有隣堂 藤沢店Twitterの魅力です。
 
緊急事態宣言による臨時休業の間もTwitterを更新されていましたよね。
髙橋さん
そうなんです。やむを得ず休業となってしまいましたが、商品を提供することができない忸怩(じくじ)たる想いのもと、唯一可能であったコミュニケーションツールとしてTwitterを活用していました。

書店に足を運べない期間でも店員さんのPOPのような書籍紹介を拝見することができる素敵な試みだと感じていました。
髙橋さん
ありがとうございます。店を休業し、あらためて自分たちの店がいかにお客さまに必要とされているか。また、書籍や雑誌・コミックが暮らしに欠かすことのできないものであることも痛感させられた時期でもありました。

髙橋さん
店を開けることができない中、自由に外出もできないお客さまと途絶えてしまったやりとりを、わずかでも続けられたら…そんな想いでTwitterを更新していました。
 
POPづくりやTwitter活用などをはじめ、伝えること、お客さまと絶えずつながること、を大切にされていることがとてもよく伝わりました。
髙橋さん
ありがとうございます。なにより書店員それぞれのおすすめしたい本が次から次と出てきてしまうんですよね。これからもPOPやTwitterなどを通して、本と人とをつなぐ書店をつくっていければと思います。
有隣堂 藤沢店
住所:〒251-0055 神奈川県藤沢市南藤沢2−1−1フジサワ名店ビル2〜5F
電話:0466-26-1411
営業時間:10:00~21:00(6月1日~当面の間:10:00~20:00)
定休日:なし
公式Twitter:https://twitter.com/yurindo_fujisaw
 

取材・文/中村瑛美里  撮影(一部) / 真田 英幸

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