G#089: 朽ちゆく薔薇と囁きの夜

名前：リリアン・エヴァレット 生誕：1812年、イングランド北部の霧深い村・レイヴンクレスト 年齢：18才 リリアン・エヴァレットは、古き館〈エヴァレット荘〉に生きる最後の令嬢。 若き士官アリステアと密かに婚約していたが、彼は戦地から帰らぬままとなった。 アリステアの消息が絶えて3年、彼女は毎夜、夢の中で彼の声を聞く。 「帰るよ」と囁くその声に導かれ、彼女は次第に現実と幻想の狭間を彷徨うようになる。 彼が贈った一輪の薔薇は、月日と共に色を褪せ、乾いた花弁となりながらも、彼女の手の中で静かに想いを守り続けていたのだった...。 ＊＊＊ 真夜中過ぎ、椅子にもたれて 灯りも消えた部屋に、私ひとり。 今日もまた見つめている、あの花を。 あなたがくれた、遠い日の薔薇。 赤い色は褪せて、花びらはもう脆い。 指で触れたら、すぐにでも崩れてしまいそう。 だけど、この枯れていく姿にこそ、 あなたの温もりがまだ残っているの。 時々、窓ガラスを夜風が叩いて カーテンがふわりと揺れるたび、 私はそっと耳を澄ませる。 いつかのあなたの「ただいま」って声を。 今夜は、風がやけに冷たい。 カーテンは、深く、静かに揺れた。 「リリアン」と、名前を呼ばれた気がして、 私は、はっと顔を上げた。 そこにいた。暗闇の奥。 あなたが立っていた。 時を超えて、命さえも超えて、 あの薔薇みたいに、壊れそうな姿で。 涙が頬を伝って落ちる。 でも、声は震えなかった。 「おかえりなさい、アリステア」 そう言った瞬間、薔薇は音もなく崩れた。 ＊＊＊ 【作品について】 こちらは、私が個人で制作しているオリジナル作品のひとつで、「Mystique in Grace」シリーズに属する作品です。 私の作品は、絵画と詩や物語を組み合わせたナラティブ・エクフラシス（絵画的物語詩）というスタイルで制作しています。 このコレクションでは「優雅さの中に秘められた神秘」をテーマに、西洋のクラシカルな肖像画スタイルをイメージしながら表現しています。 この作品は、原画ではなくキャンバスにプリントした物となります。 手作業による製作工程にAIツールを加え、時間をかけて、心を込めて制作しています。 一点物となりますので、裏面にサインとシリアルナンバーを入れさせていただきます。 この作品を気に入っていただけましたら嬉しいです。 【材質】 綿化繊混紡、桐材木枠、UVインク 【サイズ】 ご注文時に以下からお選びください。 ・F3号（273mm×220mm×D18mm） ・F6号（410mm×318mm×D18mm） ・F10号（530mm×455mm×D18mm） ・F20号（727mm×606mm×D20mm）