明治という時代は、日本の工芸史において大きな転換期でした。
明治維新により刀剣の装身具、いわゆる鍔や目貫などの需要が急激に失われ、多くの職人が仕事を失います。しかし彼らはそこで技を途絶えさせることなく、新たな表現の場として日常工芸品の制作へと活路を見出しました。
当時のヨーロッパでは、日本の工芸品が高い評価を受けており、輸出品として制作された作品も数多く存在します。その過程で、日本古来の四季感覚に縛られない自由な意匠も生まれていきました。
今回ご紹介する銅製の鳳凰花器も、そうした時代背景の中で生まれた作品の一つです。
細やかに刻まれた鳳凰の羽や表情。
力強く躍動する岩波の造形。
そして所々に残る金彩の痕跡が、作品に静かな華やぎを添えています。
本作は実用の花器というより、飾花器としての趣が強い作風です。底裏には水を入れて使用された痕跡として、銅特有の緑青がほんのりと浮かび上がっています。
緑青は銅や真鍮が空気中の水分などと反応して形成される保護膜であり、内部腐食を防ぐ役割を持っています。鉄の赤錆とは異なり、銅器が長く残る理由の一つとも言えるでしょう。
この花器は、背景に装飾を置かず、一色の壁面に静かに飾ることで、その造形美が際立ちます。照明や自然光の当たり方によって浮かび上がる陰影は、見る時間帯によって異なる表情を見せてくれます。
銅の重厚感の中にある柔らかなフォルムには、日本人特有の控えめな美意識が感じられます。
空間に静かな存在感を添える工芸美術として、お楽しみいただければ幸いです。
本作品の詳細・販売情報は下記よりご覧いただけます。
https://minne.com/items/44905654