— 3月1日、森の奥から“それ”がやってくる —
あれは、逃げていた。
森の奥、霧の中。
木々の間をすり抜けるように、音もなく。
私は追った。
息を潜め、足音を消して。
そして、捕まえた。
指先を掴み、引き裂いた。
その瞬間、青い血が飛び散った。
深く、冷たく、
まるで夜の湖の底に沈んだような色。
地面に落ちたその雫に、
草は触れた瞬間、黒く枯れた。
私はそれを持ち帰った。
それが何かも知らずに。
今、その指は静かに、
けれど確かに、動いている。
3月1日“それ”がやってくる。
奪われたものを、取り戻すために。
あなたのもとへ。
青い血の痕をたどって。