三番三・三番叟(さんばそう)は天下泰平(てんかたいへい)を祈る儀礼曲『翁(おきな)』の後半部分です。『翁』は、翁の面(おもて)を納めた面箱を持つ千歳(せんざい)、翁、三番三、囃子方、地謡が橋掛リ(はしがかり)から順に登場します。翁が舞台の中央先で座り深々と礼をします。それぞれの役が着座すると、笛の独奏に続き、3丁の小鼓が勢いよく打ち出し、翁の謡が響きます。はじめに千歳がさっそうと舞い[千歳ノ舞]、その間に舞台上で面をつけた翁が天下泰平・国土安穏を祝して荘重に舞います[翁ノ舞]。翁が舞台から退場すると、三番三が「揉み出し(もみだし)」という大鼓の打ち出しに合わせて立ち、躍動的に足拍子を踏みしめ力強く舞います[揉ノ段]。続けて三番三は、「黒式尉(こくしきじょう)」の面をつけ鈴を振りつつ、はじめはじっくりと、次第に急速に舞い納めます[鈴ノ段]。
新年に必ず、日本中の能舞台で演じられる能「翁」。能では、翁とはただの老人ではなく、霊的な力を授けられた”神の使い”である、と考えられている。そしてその舞は、国家安静、五穀豊穣を祝う寿ぎの神事とされています。なぜ、老人は翁となり、神となったのか。能の中でとりわけ神事として重んじられる「翁」の概要から見ながら、民俗学・人類学の視点から、老人→翁→神への変遷をたどっていきたいと思います。
■能『翁』の詞章
翁 とうとうたらりたらりら。たらりあがりいららりどう。
地 ちりやたらりたらりら。たらりあがりららりどう
翁 所千代までおハしませ
地 我等も千秋さむらハふ
翁 鶴と亀との齢(よわい)にて
地 幸(さいわい)心に任(まか)せたり
翁 とうどうたらりたらりら
地 ちりやたらりたらりら。たらりあがりららりどう
千歳 鳴るハ瀧の水。鳴るハ瀧の水日ハ照るとも
地 絶えずとうたり。ありうどうどうどう
千歳 絶えずとうたり。常にたうたり(千歳の舞)
千歳 君の千年を經ん事も。
天津をとめの羽衣よ。鳴るハ瀧の水日ハ照るとも
地 絶えずとうたり。ありうどうどうどう
翁 総角(あげまき)やとんどや
地 ひろばかりやとんどや
翁 座して居たれども
地 まゐらふれんげりやとんどや
翁 千早振(ちはやふる)。神のひこさの昔より。久しかれとぞ祝ひ
と謳われます。
主に茶道では「香合」「扇子」「茶碗」「画賛」で用いられ可愛い御猿が翁の能面をかぶっているイメージで天下泰平を願う茶の文句に使われます。