路地を歩くのが好きです。
曲がり角を曲がった先に見える小さな奥行き。
古い壁に絡まるツタ。コンクリートの隙間から伸びる雑草。
揃っていないタイルやレンガ、後から付け足された階段、錆びた金物。
そこには、誰かの暮らしや時間が少しずつ積み重なっています。
きれいに整えられた景色ではなく、自然と人工物がせめぎ合い、偶然や時間によって生まれた「痕跡」に惹かれてきました。
忙しい日々の中で、ふと緑や小さな景色を見ると気持ちが楽になることがあります。
TRACEは、そんな自分が好きだった景色を、暮らしの中に置ける小さなかたちにしていくところから始まりました。
モルタルを中心に、建築のディテール、植物、光、錆、欠け、ヒビ、そして制作の中で生まれる偶然の表情。
それらをひとつひとつ受け入れながら、植木鉢や小さな器をつくっています。
目指しているのは、完璧に整ったものではありません。
そこに何かがあったような。
誰かがそこで暮らしていたような。
植物が少しずつ人工物に入り込んでいくような。
そんな「小さな風景」です。
ひとつの作品を眺めたときに、少しだけ想像が広がる。
そして、忙しい毎日の中でふと目を向けたとき、少しだけ気持ちがほどける。
そんなものを、手のひらに収まる大きさで届けたいと思っています。
BASIC、SPRINKLE、RUST、1:12、ZEO、OFFSET。
それぞれ異なる表情を持ちながら、すべての作品に共通しているのは、「器の中に景色をつくる」という考え方です。
あなたの暮らしの中にも、ひとつの小さな景色としてTRACEを置いてもらえたら嬉しいです。
建築を7年学び、設計事務所や住宅メーカーでの経験を経て、現在は塗装職人として素材と向き合っています。路地や古い建物に刻まれた、暮らしの痕跡や時間の重なりに惹かれ、ものづくりを続けてきました。モルタルの質感や揺らぎを生かし、自然と人工物、時間と偶然が交差する、小さな風景を作品として立ち上げています。
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