春に差し掛かって参りました。
暖かくなると共に、
出会いに別れに忙しい季節です。
春になると、どうしても
思い出すことがひとつあるので
お話させていただきましょう。
赤、青、黄の旗を掲げる三つの国。
それぞれの国王の愛姫たちは
城の鍵を首からネックレスのように下げて
いつも身につけておりました。
…
だってこの胸の中が
国中で一番安全ですもの
どんなに強い騎士が持つよりも
どんなに硬い金庫よりも
わたくしはいつも城の一番奥にいて
守られているから
でも
いざというときには
この鍵を閉めて
私が皆を守るわ
…
しかし、今は不思議なことに
各国の歴史書のどこを読んでも
王女が生まれたという記録はない。
彼女たちはその存在を
国民にも世界にも
明らかにされていなかったのです。
それも全て、城を守るための策略でした。
でも寂しくはなかったようです。
隠された三人の王女たちは
彼女たちだけの交流と友情がありました。
春になると年に一度だけ
招待状をお互いに送り合い
いずれかの城のどこかの部屋で
お揃いの色違いのドレスを着て
秘密のお茶会を続けてきました。
忘れないようにお互いの名前を
何度となく呼び合い
また会える次の春までは
手紙をずっと書き続けます。
-きっとまた逢いましょうね-
彼女たちの髪が白くなっても
守りの城が誰にも辿り着けない場所へ隠され
もはや侵攻する者も訪れる者すら居なくなっても
その胸にはいつまでも城の鍵が
誇り高い使命と共に胸に下げられています。
春が来ると
美しいドレスが纏う薔薇の香りと
楽しげな話し声が聞こえてくるようです。
それでは、又。