++天空の盃++

++天空の盃++

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店主の弥光で御座います。 あまり雪の降らないこの場所でも 白雪が薄く積もっております。 雪の降る空を見上げていると 天空に浮かぶ白亜の神殿を思い出します。 白亜神殿は空海の畔にあり、 船乗りの漕ぐ夜色の船で雲海を渡ります。 一杯どうか、と問われ、頂きますと返すと 不思議な形の杯を渡されました。 白葡萄の香りのする冷水でした。 神殿に到着すると騎士が警護についており 肩に立派な鶚を止まらせています。 ここの人々は皆、鳥を飼っているようで 黄色い小鳥を頭に乗せた子供が 私を不思議そうに眺めていました。 騎士に案内され神殿に入ると、 祷を捧げる踊り子の後ろには 見事な孔雀が羽を開いていました。 彼女にもまた、水を頂きました。 その奥、神台の前に立つ神官の腕には 白梟が金色の眼を向けて座っていました。 ここでもまた、一杯、勧められました。 どうやら、この水交わしは習慣のようです。 皆、同じ大きな石から削出した八角の杯を 生まれた時に神から頂き、 その盃を交わすと良い縁が出来るのだと 信じられていると神官が語りました。 これも何かの縁と思い 同じ石を持ち帰り、 この度新たに作品を作りました。 飛ぶ鳥は見た事がある、しかし 跡を濁さず彼らは何処へと去るのか。 最後まで見送る事が出来た試しはなく 見失うに近いことが多い、と云うより 気にもしていませんでしたが… 鳥たちはあの白亜の神殿で 暮らしているのかもしれませんね。 白亜の天空神殿については、 まだ語りたい事が御座いますが 今回は此の辺りで 一杯お水でも頂きたいと思います。 其れでは、又。

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石と硝子を紐で編む店

弥光商店
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