【怪談話】車窓

【怪談話】車窓

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私は、電車通勤をしておりまして、通勤中はスマホを見ていることが多いのですが、その日はとても混んでいて生憎の満員電車でした。とてもスマホを見ている余裕はない。皆さんも、そんな経験、一回はあるのではないでしょうか? 私は、窓側に押し込められてスマホも見ることができず、こんな日でもないと車窓からの眺めなんて見ないなぁ、と思い外の景色を眺めていました。 電車って、電車側からみると、外の景色は意外とゆっくりみえるものです。そのときは、あるビルの中の様子が目に入りました。窓から中の様子が見えるほど、遮るものはなく、はっきりと中の様子も見ることができました。 その様子は、男が男の頭を叩いている様子でした。最初は驚きましたが、後から上司が部下を指導している様子というのが分かりました。どうしてかというと、その日を境に、私は、座席が空いているのにわざわざ窓際に立って、そのビルの中の様子を見るようになったからです。 毎日、見ているうちに、だんだんとわかってきたことがありました。頭を叩いている男は、いつも同じ男で、短髪、メガネをかけていてスーツ姿と如何にも仕事ができそうな感じでした。部下の方は、日に日に変わっていた感じでした。 そんな通勤を一週間ちょっと続けていた頃でした。今までは頭を叩いている程度でしたが、その日は棒のようなものを持って部下を殴っているところを見てしまいました。マズイものを見たと思った矢先、その男もマズイことをした、と思ったのか、フッと窓の外を見たので、私と目があってしまったのです。その日から数日間は電車から外を見ることはありませんでした。 ある朝、久々の満員電車。窓側に押し込められて、男と目があったあの日のことを思い出し、気になってあのビルをみてみようと思いました。しかし、そのビルにはもうブラインドが掛かっていたのか、中の様子を見ることはできず、少し残念ながらも、ホッと安心しました。 しばらくして電車がトンネルに入ったとき、電車の窓から反射する自分の顔の、少し後ろの方、なんだか見覚えのある男と、反射したガラスごしに目が合いました。それは短髪、メガネのスーツ姿のあの男。目があった途端、何かを見つけたようにニヤリと笑いました。 幸い、次の停車駅で私が押し込められている側の扉が開いたので、走って逃げました。 あの日から私は同じ電車を使っていません。今もあの男が、どこかの電車で私のことを探しているかもしれません。

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クリエイター

GARNET
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