「はじめのチーズ」には、小さなぷつぷつとした
穴が開いています。
チーズに開いている穴の事をチーズの目という
意味で「チーズアイ」と呼びます。
チーズはその瞳を涙で潤ませます。
穴のあいたチーズを見かけたら、その穴を覗いて
見てください。
・・・キラリとひかるもの、見えました?
チーズの瞳が濡れたように見えるのは、うま味の
結晶が光って見えるのです。
ではだれがチーズに穴を開けたのでしょう?
私(チーズ職人)は開けていませんよ。
まん丸のコンパスで描いたような穴があったら、
それはプロピオン酸菌という菌が開けた穴です。
これはチーズフォンデュの材料として使われる
エメンタールチーズを作る時に使われます。
「はじめのチーズ」は製造過程でプロピオン酸菌
は入れていません。
しかし、このまん丸の穴が開く事がよくあるのです。
確かにプロピオン酸菌はそこにいます。
では、どこから来たのか。
話は生乳にさかのぼります。
チーズを製造する際には生乳のたんぱく質を
壊さないよう低温(65℃)で30分、じっくりと
時間をかけて殺菌します。
生乳の中にいたプロピオン酸菌はこの温度の殺菌に
耐え、チーズに残ったと考えられます。
では、なぜ生乳の中にプロピオン酸菌がいたのか。
話はさらにさかのぼり、牛の餌に行きつきます。
牧場では牛たちの為にトウモロコシを栽培しています。
秋にこのトウモロコシを茎も葉もすべて、細かく刻み、
サイロに詰めます。
そして密封し、漬物を作ります。
発酵食品なので、菌の力で硬いトウモロコシを消化の
しやすいサイレージというご飯にします。
このサイレージには主に3種類の菌がいます。
乳酸菌。これは人間が食べる漬物にもよくいます。
酪酸菌。これは話すと長くなるので、あとにします。
最後がプロピオン酸菌。
そう、もともと牛達が発酵食品を食べていたので、
そこにいた菌が牛の胃でも生き残ったのです。
そして、生乳に残り、チーズ製造の際の加熱殺菌でも
生き残り、チーズに残り、熟成庫で熟成させている
あいだにチーズを美味しくさせて、ガスを出します。
そして、チーズに小さな穴を開けたのです。
本当に強い子。ちいさな体で壮大なストーリー。
・・・泣けます。
この穴はある程度、大きなサイズでチーズを作らないと
ガスが抜けてしまうので、開きません。
なので、1kgホールチーズで穴が見られることは
ごく稀です。
100gサイズにカットした「はじめのチーズ」には
穴が見られることがよくあるので、運よく穴を見つけた
方は、その瞳をじっくりと見つめてくださいね。
https://minne.com/items/22414099